2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J05077
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松山 沙織 大阪大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 非国際的武力紛争 / 武力紛争法 / 武力紛争の敷居 / 旧ユーゴスラビア刑事裁判所 / 国際刑事裁判所 / 国際刑事法 / タジッチ事件 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題研究は、非国際的武力紛争に関する武力紛争法諸規則についての体系的な検討である。2015年度は、特に、非国際的武力紛争の武力紛争法上の定義についての研究が深められた。この論点につき、非国際的武力紛争の定義を構成する烈度と組織性の二要件に着目して、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所の判例分析が進められた。この研究成果は、「旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所による非国際的武力紛争の定義とその意義-タジッチ基準にみる烈度要件と組織性要件」と題して、『阪大法学』に投稿し、査読を経たうえで受理され、第65巻第3・4号(2015年)に掲載された。 また、この検討結果から、武力紛争法と国際刑事判例の関係の研究という論点についても考察を深め、この論点と関連する書籍について、2016年3月5日に京都大学に於ける国際法研究会にて、書評報告を行った(Shane Darcy, Judge, Law and War : The Judicial Development of International Humanitarian Law , Cambridge UP, xxv +396 pp.) 。本成果については、2016年度中に『国際法外交雑誌』にも投稿予定である。 また、2016年3月にカンボジアに渡航し、プノンペン近郊のカンボジア特別法廷、および領有権をめぐり隣国タイとの紛争の原因となり一時武力衝突が発生した地であるプレアビヘアなどを訪れた。カンボジア特別法廷では、カンボジアにおける非人道的行為についての事実認定の根拠の一つとなったイェール大学の調査報告書につき、資料の信用性について審議が行われており、裁判傍聴を行った。プレアビヘアでは、タイとの国境紛争の現状について視察し、タイとの緊張状態における被害の実態や現地の人々のインタビューなど行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度中に検討すべき重要論点、すなわち、非国際的武力紛争の国際法上の定義および判例上の解釈アプローチについて分析することに成功した。この論点については既に、2015年度の阪大法学でも公表され、内外学界への貢献の観点からも目標を達した。 ただし、武力紛争法と国際刑事判例については、詳細な分析でには至っておらず、2016年度に関連文献の書評を行うとともに、分析結果をまとめ、学術雑誌に投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度に十分な検討がなされなかった非国際的武力紛争における武力紛争法とその他の法との関係および非国際的武力紛争における武力紛争法の意義についての検討を2016年度に行う予定である。具体的には、まず、武力紛争法と国際刑事判例との関係について、国際的刑事裁判所の役割に焦点を当て、検討する。国際的刑事裁判所は武力紛争法規則を反映した裁判規範に則り、非国際的武力紛争について独自の定義づけや適用規則の認定を判決において行っているが、裁判所によるこのような行為が、行為規範である武力紛争法に与える影響について考察する。また、複数の国際的刑事裁判所で構成される国際司法主体の構造を把握するため、それぞれの裁判所の設置形態とそれに伴う裁判所の特徴を、各裁判所の根拠規定や関係条約、合意文書等を通じて確認する。また、体系的な研究となるように、非国際的武力紛争下で作用する国際法・国内法の全体構造における、武力紛争法規則の意義を明らかにし、将来起こり得る仮説的事例にあてはめて、紛争下にある人々の保護に最も適切な法を検討する。
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Research Products
(3 results)