2016 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエにおける求愛行動の種特異性を生み出す神経回路基盤の探索
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15J05088
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 良弥 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 行動の種間差 / ショウジョウバエ / 求愛行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はショウジョウバエ属の求愛行動を材料に、行動の種間差を生み出す神経基盤を明らかにすることを目的としている。モデル種であるキイロショウジョウバエではfruitless(fru)と呼ばれる遺伝子の働きによって求愛行動が生み出されることが知られている。この知見から、fruが求愛行動の種間差の形成に関与している可能性を考えた。昨年度までに、キイロショウジョウバエとは異なる求愛行動を示すDrosophila subobscura (D. subobscura)にCRISR/Cas9システムを用いて、人工遺伝子を導入する手法を確立した。この手法を用いてD. subobscura のfru遺伝子座へ蛍光タンパク質マーカーを含む光遺伝学ツールを導入した。作製したトランスジェニック系統に対して蛍光タンパク質マーカーに対する免疫組織化学法を実施することで、fruを発現している神経細胞群を可視化することに成功した。また、導入した光遺伝学ツールを用いてfru発現神経細胞群の強制活性化を実施したところ、D. subobscuraに特異的な求愛行動と考えられる行動要素が惹起された。これらの結果は、キイロショウジョウバエとD. subobscuraにおける求愛行動の違いがfruを発現している神経細胞群の機能的な変化によって生み出されている可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、D. subobscuraを用いてfru遺伝子を発現する神経細胞群の可視化・強制活性化を行うことができたため。また、翌年度の実験に必要なトランスジェニック系統の作製も順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、fruを発現する神経細胞群がD. subobscuraに特異的な求愛行動の形成に寄与している可能性が示された。キイロショウジョウバエの神経系では約2000個の神経細胞がfru遺伝子を発現していることが知られており、D. subobscuraにおいても同程度の細胞でfruが発現していることが考えられる。今後は、モザイク解析法を導入することで種特異的な求愛行動を生み出す少数のfru発現神経細胞群を同定する。
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Research Products
(3 results)