2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J05161
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 正寛 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | パワーモジュール / シリコーンゲル / 沿面放電 / 部分放電 / ストリーマ / PRPDパターン |
Outline of Annual Research Achievements |
ポッケルス効果を用いることで、数十μmという高い空間分解能をもって電位分布の過渡応答を測定した。粘弾性理論に基づく解析やゲル中沿面放電の発光様相などをあわせることでゲル中沿面放電は電極を発したストリーマがキャビティーのトリー中を進展し、先端のボイドまで帯電させることや、ストリーマによってキャビティーが同極性に帯電することがゲルの自復を妨げること、正極性のストリーマは負のそれに対し進展長が長いため、キャビティー先端は正極性ストリーマによって進展することが明らかとなった。これまでパワーモジュールの部分放電試験時に印加される交流電圧印加時のゲル中の沿面放電現象を明らかにしてきたが、実機の運転時に絶縁部に印加される片極性の電圧に対するゲル中放電の特性を調べる準備として、交流波形を全波整流した電圧を印加した結果、印加電圧の極性によらず同様の放電様相を示すことがわかった。さらに、印加電圧の極性によらず、正極性のストリーマによってキャビティーが進展すること、沿面放電の進展特性が印加電圧のpeak値ではなく、peak-to-peak値によって決定されることがわかった。また、これまでに述べてきたゲル中沿面放電の評価方法を用いて、電力機器の診断に広く用いられるPRPDパターンに放電モードを対応させることで、PRPDパターンの物理的な解釈を明確にした。加えて、実機に用いられるAlN基板が沿面放電によってNが脱離し、絶縁基板表面の導電性が増すことで、絶縁劣化が進行することを明らかにした。さらに、基板表面の酸化処理によって耐劣化特性が飛躍的に向上することを示した。 SiCチップ端電位分布の過渡応答の取得に関しては、冶具の設計・開発が終わった。測定系は1 ns程度時間分解能を有し、現在、急峻な立ち上がりの電圧波形を印加したときの電位分布の過渡応答を取得している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本来の計画とは順番を前後させているが、これは後述するように、PRPDパターンとゲル中放電様相の対応の評価や沿面放電による絶縁材料の劣化メカニズムの調査が想定以上に進展したことと、SiCチップ端の電界分布測定装置の設計や構築が当初の予定よりもはやく進んだからである。(1) phase-resolved partial discharge (PRPD)パターンの放電様相との対応付けに関しては、ボイドの挙動解析まで含めた評価を行うことができ、当初予想していたよりも詳細に放電様相の空間的情報を得ることができた。(2)絶縁材料の劣化メカニズムに関してはメカニズムの検討にとどまらず、それを明らかにし、さらに劣化を抑制する材料表面処理方法を提案し、それを実験的に検証するに至った。(3)SiCチップ端電界分布測定に関しては目標としていた時間分解能を問題なく達成し、現在電位分布を取得している段階である。このような点から当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通りすすめる。ただし、予想よりも研究が進展しているため、材料中の電荷輸送と特性や劣化特性を量子化学計算によって自明でない仮定を用いることなく評価している。
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Research Products
(12 results)