2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J05202
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
瀬戸 裕介 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 記憶学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、 1. 特定の記憶学習に使われた神経回路の標識法の確立、 2. 通常よりも空間弁別性の高い恐怖記憶を形成するための行動実験課題の作製、 3. in vivoカルシウムイメージングの系の確立 の3点について研究を行った。1の特定の記憶学習に使われた神経回路の標識法の確立については、シナプスを介して神経細胞間を逆行性に輸送されるGFP-TTCを用いて、狙った神経回路の標識・可視化が可能か検証実験を試みた。ヒトシナプシンプロモーターの下流でGFP-TTCが発現するようなアデノ随伴ウイルスを作製し、マウス脳への投与を行い、2~3週間の後にGFP-TTCの発現を解析した。結果、ウイルスによるGFP-TTCの発現は確認出来たものの、逆行性輸送の効率が想定よりも低く、また細胞体の標識が明瞭でなかったため、この方法による神経回路の標識は有効ではないと判断し、現在は別の方法による神経回路標識法の確立に取り組んでいる。2の行動実験課題の作成については、年度途中で実験装置の入れ替えなどがあったため、現在条件の再検討・確認を行っている。3のin vivoカルシウムイメージングについては、本年度は海馬を対象領域として系の確立を試みた。結果、小型内視顕微鏡を利用して、アデノ随伴ウイルスによって発現させたGCaMP6の蛍光強度の経時変化を自由行動下のマウスから取得することが可能となった。また、行動実験装置と顕微鏡の同期など、装置面にも必要な改良を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、TetOプロモーターの下流でGFP-TTCを発現するアデノ随伴ウイルスを作製し、c-Fosプロモーターの下流でtTAを発現する遺伝子改変マウスに投与することによって、特定の記憶学習時に活動した神経回路を標識することをひとつの目標としていた。しかしながら、GFP-TTCによる神経回路の標識が予想よりも明瞭にはならなかったため、別の手法の開発が必要となった。しかしながら、TetOプロモーターを含むアデノ随伴ウイルスについてはいくらかの改良を加え、これまで問題となっていた漏れの遺伝子発現をほとんど抑制することが可能になった。行動実験の確立については、所属機関の異動などに伴い、行動実験装置の入れ替え等があったため、条件検討に遅れが出てしまっている。現在、新たにセットアップされた行動実験装置において条件検討を急いでいる。小型内視顕微鏡を用いたin vivoカルシウムイメージングの系の確立には一定の進捗があり、自由行動下のマウスの海馬から神経細胞における細胞内カルシウム濃度の経時的変化を捉えられるようになった。こちらについては、GCaMP6を発現させるためのウイルスの濃度の最適化や行動実験装置と顕微鏡のシステムの同期等、いくつかの点について条件検討・セットアップが順調に行えている。現在は、基本的な行動実験課題について試験的にデータの収集・解析を行い、今後の研究に必要な情報を得ようとしているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
神経回路の標識法の確立については、今後は、GFP-TTCの代わりにCre-TTCによるCre-loxPシステムを利用した組換え系を用いた方法について検討していく。この方法を用いれば、TTC配列による逆行性輸送が量的に充分にいかなくとも、上流の神経細胞の標識が可能になることが期待される。懸念事項として、TetOプロモーターからの洩れによって上流細胞での組換えに充分な量のCre-TTCが発現してしまうことが挙げられるので、早い段階で詳細に検討を行っていく。また、行動実験の確立については、行動実験装置のセットアップが完了したため、なるべく早く確立することを目指す。in vivoカルシウムイメージングの系については、手術方法などについては今年度の段階でかなり改良を加えた状態で確立出来たため、今後は行動中のマウス神経細胞の基本的な発火のパターンについて解析を行っていく予定である。また、小型内視顕微鏡によるイメージングでは取得出来るデータのサイズがかなり大きくなるため、効率的なデータの解析法等についても検討を進めていく。本年度は海馬CA1領域を中心にカルシウムイメージングに必要な技術の確立などを行ってきたが、本研究課題においては今後、前頭前野での神経活動の長期的な記録も必要になってくるものと思われるため、前頭前野の神経細胞からも神経活動を取得出来るように手術の方法の確立を行っていく予定である。
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