2015 Fiscal Year Annual Research Report
テトララジカル性芳香族炭化水素の合成と電子状態の解明
Project/Area Number |
15J05266
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三好 宏和 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 一重項ジラジカル / 一重項テトララジカル / 分子構造 / 電子構造 / 多価アニオン / アルカリ金属還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、一重項ジラジカル性を有する芳香族炭化水素の合成と電子状態に関する研究が行われるようになったが、一重項テトララジカル性を有する芳香族炭化水素の研究は全くなされておらず、基礎有機化学において取り組むべき重要な課題となっている。本研究では、環状のテトララジカル性を有する芳香族炭化水素の合成と電子状態の解明を目的としている。 内側が8員環、外側が20員環で形成される環状のテトラシクロペンタテトラフェニレンに注目した。このものは閉殻の2回対称の構造と開殻の4回対称の構造が考えられ、4回対称の構造ではテトララジカル性を示すと期待される。テトラメシチル誘導体の合成を行い、単離することに成功した。しかし、温度可変NMR測定および温度可変単結晶X線構造解析から、合成した化合物は閉殻の2回対称の構造が基底状態であることが明らかとなった。一方、再結晶溶媒を換えることにより解析精度は低いものの、4回対称の構造が結晶のパッキングフォースにより捕捉されていることを示唆する4回対称の空間群をもつ結晶が得られた。現在、詳細について検証している。 また、合成した化合物の電気化学特性、電子吸収スペクトルを調査したところ、可逆な二電子の酸化還元を示し、小さなHOMO-LUMOエネルギー差を有することが明らかになった。可逆な二電子の酸化還元を示したことから、還元種の性質も調査した。金属カリウムによる還元を行った結果、ラジカルアニオン、ジアニオン、ならびにテトラアニオン種の生成と同定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに目的としていたテトラシクロペンタテトラフェニレン誘導体の合成と基底状態の電子状態の解明に成功した。基底状態は閉殻構造であったが、結晶のパッキングフォースによりテトララジカル性を示すと期待される4回対称の構造の捕捉に成功していることを示唆する実験結果が得られている。 また、可逆な二電子の酸化還元を示したことから、還元種の性質について調査したところ、ラジカルアニオン、ジアニオン、ならびにテトラアニオン種の生成と同定に成功した。 以上のことから、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
4回対称の空間群をもつ結晶について、得られた結晶のより高い精度でのX線構造解析に加え、結晶のESR測定、電子吸収スペクトル、IRおよびラマンスペクトルの測定を行い、2回対称の結晶との電子状態の違いの有無を検討する。 また、還元種の更なる分光学データを取得するとともに、酸化種の性質についても調査する。
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Research Products
(4 results)