2015 Fiscal Year Annual Research Report
バイオマス由来ポリオールの連続的シグマトロピー転位反応の開発と応用
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15J05300
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中山 泰彰 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | バイオマス / 光学活性 / シグマトロピー転位 / Overman転位 / Claisen転位 / アルカロイド / ネオステニン / 全合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬品をはじめとし、有機合成により安定供給が望まれる化合物は、近年その分子構造が急激に複雑化している。特に分子中の不斉点の数が大幅に増加しており、光学活性物質の安定的供給は性急な課題である。光学活性物質を合成する際の出発原料として、安価かつ大量に入手可能なバイオマス(糖、酒石酸など)が長年用いられてきた。しかし、バイオマス中には類似の水酸基構造が複数個存在し、その区別化のために、多数の保護基の着脱が不可欠であった。そのため、反応工程数の増加が避けられず、複雑化合物への応用に問題点をかかえていた。そこで、申請者はバイオマス由来の3つの水酸基を同時に利用する独自の連続転位反応を計画した。本研究では、バイオマス由来のトリオールを転位中に区別化する方法論の確立と、本法を利用した天然物合成を目的とした。 本年度は、①バイオマス由来のトリオールを同時に利用する連続転位反応の開発、②開発した反応を用いた天然物合成、の2点に取り組んだ。 ①: D-グルコースよりわずか2工程でトリオールを調製し、連続転位反応を検討した。その結果、2連続不斉中心の構築に成功した。現在、3回目のシグマトロピー転位の適用を検討している。 ②: 開発した連続的Overman/Claisen転位を鍵反応とした、生物活性アルカロイド(+)-ネオステニンの全合成に着手し、これを達成した。本法により、バイオマス由来の2つの水酸基を転位中に区別化し、同一反応容器内で2種類の異なる転位の適用が実現できた。鎖状の基質にて4つの不斉点を構築する本合成戦略は、ネオステニンの全合成における極めて独創的なアプローチである。また、ネオステニンは過去に2つの全合成例が報告されているが、いずれもラセミ体の合成であり、本合成が世界初の天然型光学活性体の全合成例となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トリオールに対し、2種類の異なる転位を適用できた。また、開発した連続的Overman/Claisen転位により、天然物に対応する含窒素2連続不斉中心を一挙に構築し、(+)-ネオステニンの世界初となる不斉全合成を達成した。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
トリオールに対する3回目の転位の適用、ならびに3回の連続転位反応のワンポット化に取り組む。同時に、開発した方法論の更なる有用性を示すべく、既に全合成を達成したネオステニンの類縁天然物の網羅的全合成を目指す。
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Research Products
(5 results)