2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15J05303
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
松井 一樹 上智大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / μSR / スピンロック / NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、トポロジカル絶縁体表面に完全に偏極しているといわれているスピン対を、試料表面に平行に磁場を印加することによってスピン流の時間反転対称性を破り、その結果表面に垂直に現れる磁化を、ミュオンの時間スペクトルの変化として検出しようとするものである。 本年度はまず、トポロジカル絶縁体Bi1.5Sb0.5TeSe2の表面スピン構造について、前年度までに行ったスイスPSIにおける低速ミュオンを用いた試料表面の測定、英国RALにおけるバルクμSRによる試料内部の測定の結果について詳細に解析を行った。特に低速μSRの結果については、標準資料(金箔)を用いた低速μSRの比較追実験をスイスPSI研究所にて行い、詳細に解析を行った。その結果、前年度得られた、表面での速い緩和が標準資料でも見られた。したがって、トポロジカル由来のスピン磁性は、本装置での分解能では観測不可能と言うことが確認された。今後、さらに高い分解能を持つJ-PARC等、他の施設での実験を目指して行く必要がある。 本研究の課題の一つとして、粒径の異なる微細試料におけるNMR-T1測定から表面伝導電子の非弾性散乱長の決定を行い、それを基に必要なアンロック磁場の強さを評価することが挙げられる。これについては、本年度は予備実験として特徴的なT1の温度依存性が期待される関連試料について測定を行い、ターゲット試料の測定における手法や問題点、解析方法の検討を行った。ターゲット微細試料については現在準備中である。また、Bi核、Te核のNMR信号の検出についても現在、進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の目的の概要は以下の三点である。 1.スピンロック現象を、試料表面を選択的にプローブできる超低速μSR実験によって検証し、第一原理計算を用いてミュオンサイトにおける超微細場の大きさを評価し,妥当性を検証する。 2.NMRを用いて表面伝導電子の非弾性散乱長を求め、必要なアンロック磁場の強さを評価し、1の結果と比較する。 3.不純物ドープによりフェルミ面の異方性が減少し、スピンロックがエンハンスされる可能性(不純物効果)を検証する。 このうち、2においてはNMRの縦緩和時間T1を、異なる粒径のターゲット微細試料について測定することで評価する。予備実験として、本年度は特徴的なT1の温度依存性が期待されるいくつかの試料について測定を行い、ターゲット試料の測定における手法や問題点、解析について知見を深めた。ターゲット微細試料については現在準備中であり、最終年度では本年度の知見を基にターゲット試料の測定を行い、表面伝導電子の非弾性散乱長を求め、必要なアンロック磁場の強さを評価する予定である。これらの観点から、進展状況についてはおおむね順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね当初の研究計画に沿って順調に研究が進展している。大きな研究計画の変更は行わず、引き続き以下の3点について研究を展開して行く。 1. 第一原理計算を用いてミュオンサイトにおける超微細場の大きさを評価する。 2. J-PARCの超低速ミュオン施設はLEMを超える高い分解能を持つため、J-PARCでの測定を行う。 3. 粒径を変えた微細試料に対してNMR-T1測定を行うことで表面伝導電子の非弾性散乱長を求め、ミュオン測定の際に試料に印加した磁場の強さを評価し、これまでに得られている結果と比較する。
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Research Products
(16 results)