2016 Fiscal Year Annual Research Report
幕末明治思想史における頼山陽の位置 -政治理論書『通議』を中心に
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15J05342
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
濱野 靖一郎 国際基督教大学, アジア文化研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 頼山陽 / 漢学 / 明治維新 / 政治理論 / 川路聖謨 / 拙修齋叢書 / 通議 / 日本外史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は書評論文を1本、投稿論文を1本書き、シンポジウム発表が1つ、学会例会発表が1つ、また、来年度の日本政治学会の分科会の企画申請をし、採択された。昨年度入稿した原稿4本が公刊された。その内、山陽自身を論じたものが「『日本外史』の執筆意図とその誤読」、「天下太平の構築・頼山陽の徳川家康観」と「徳川時代に於ける漢学者達の朝鮮観―朝鮮出兵を軸に」の3本で、山陽の受容は、「「悲憤慷慨」の人、渋沢栄一 -「頼山陽」と武士のエートス-」である。 本年度の研究では、受入研究者である小島康敬先生からの要請で、高山大毅『近世日本の「礼楽」と「修辞」 荻生徂徠以後の「接人」の制度設計』(東京大学出版会、2016)の書評会を開催し、評者を務めた。同書は本年度のサントリー学芸賞も受賞した作品で、本書評は国際基督教大学アジア文化研究所紀要『アジア文化研究』43号(2017年3月)に「新たなる「典型」の誕生」と題して掲載された。 また、2017年1月21日に二松学舎大学で開かれた、二松學舍大学創立140周年記念事業、二松學舍大学私立大学戦略的研究基盤形成支援事業主催シンポジウム「「論語」と「算盤」が出会う東アジアの近代 渋沢栄一と三島中洲」で発表した。人が本来の属性ではないものに憧れ、変わろうとする心性について論じ、山陽の著書が主には村人であった幕末の志士に「武士のエートス」を与えた状況について整理した。また、2017年3月11日に日本経済思想史学会例会(慶應義塾大学)で、「『周礼』における理財と統治 王安石と太宰春台」と題して発表した。博論で述べた山陽と春台の財政論を再検討した結果、その前提に王安石の財政思想を検討る必要があったため、再構成したものである。本発表は改訂を加えて日本思想史学会に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度入稿した論文4本を刊行したとはいえ、それは本課題採択前に既に発表していたものばかりである。また、山陽の学問が影響を受けた存在であるため、太宰春台に関する発表・投稿及び、徂徠学を研究した著書への書評と、基本的には依頼された仕事に応じることが多かった。それは本課題の可能性を豊かにしてくれるものであり、決して問題のあるものではない(近世後期漢学思想史であることは同じなのだから)。それ故、めざましい進展とするには問題はあるものの、当初の計画はより具体性を帯びていった。また、本課題の対象をかなり多くの人物にしていたが、資料を入手していくうちに、川路聖謨に絞ることでより明確な成果を上げられることに気がついた。次年度、ここで気がついたことをもとに修正していく。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の集大成として、日本政治学会(法政大学)での学会発表を予定している。私が企画立案者として、「実務官僚・統治者における政治思想史」と題した分科会を申請した。発表者は濱野「実務官僚・川路聖謨。その政治実践に於ける漢学」に、木村俊道(九州大学)の初期近代イングランド論と、大久保健晴(慶應義塾大学)の幕末蘭学思想史で構成したものである。本企画は採択され、本年度発表の予定である。本課題は頼山陽の学術を学び、それを政治実践として幕末維新期に活躍した川路聖謨を中心人物の一人としている。本発表はそうした川路が山陽から学んだことが、どのように政治認識を改めさせたかが主眼であり、本課題の成果として代表的な物になると想定している。 また、5月〆切りの『アジア遊学』徳川家康特集号(勉誠出版・防衛大学教授・井上泰至氏編集号)に、川路聖謨による徳川家康論を予定している。この発表・原稿に加え、年度末までにもう一つの川路論を投稿論文として用意できればと考えている。
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Research Products
(7 results)