2015 Fiscal Year Annual Research Report
近代タイにおける在野知識人の思想:シーブーラパーの言論活動を中心に
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15J05394
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇戸 優美子 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | タイ / 近代文学 / 立憲革命 / 作家集団 / シーブーラパー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象であるタイ人作家シーブーラパー(1905-74)に関する資料の収集と整理、読み込み、分析を進めた。2回の現地調査で、タイ国立図書館、チュラーロンコーン大学図書館、タマサート大学図書館、そしてシーブーラパー記念館を訪れ、シーブーラパーの長編小説、短編小説、論説集、エッセイ、またシーブーラパー作品に対する評論、研究書、学術論文などを収集した。シーブーラパー記念館では遺族にインタビュー調査を行い、記念館所蔵の蔵書リストを入手することができた。 以上のように収集した資料の分析を行い、その研究成果を日本タイ協会の機関誌『タイ国情報』にて複数回にわたり発表した。主に、シーブーラパーの出世作となった長編『快男児』(1929)、掲載誌が発行停止となった論説『人道主義』(1931)、ドストエフスキーに影響を受けた小説『人生の闘い』(1932)について、同時代の作家やタイ近代文学黎明期の状況と合わせて論じた。また、特に1929年に彼が中心となって結成した作家集団「スパープ・ブルット」(紳士)と彼らが発行した文芸誌についてまとめた論文を『日タイ言語文化研究』第3号に発表した。これらの成果により、1932年立憲革命以前の、シーブーラパーの代表的な小説作品と評論についての研究を進めることができた。さらにこの結果を東南アジア学会中部例会において発表した。 また、20世紀初頭のシーブーラパーの時代に始まり、現在に至るまでのタイ近現代文学の日本での受容、翻訳状況についての研究も行い、バンコクで開催された比較文学の国際シンポジウムと日タイ言語文化研究会にて発表した。さらにタイ文学作品の翻訳活動も並行して行い、2014年クーデタ後に書かれた短編小説2編を翻訳し『東南アジア文学』14号に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は2回のバンコク調査を行い、資料収集、インタビュー調査などを進め、収集した資料の分析結果を、『タイ国情報』での論文発表、研究会での口頭発表の形で発信することができた。また、タイ文学作品の翻訳を『東南アジア文学』において発表することも並行して行った。以上より、本年度の研究はおおむね計画通りに進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)での資料収集を行う予定である。また、収集したシーブーラパーに関するタイ語資料の解題を伴うデータベースの作成を行っていきたい。さらに学会、研究会での口頭発表を継続して行い、研究成果を投稿論文としてまとめる予定である。
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Research Products
(9 results)