2015 Fiscal Year Annual Research Report
コーパスに基づく英語名詞転換動詞の実証的・理論的研究
Project/Area Number |
15J05407
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中嶌 浩貴 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | フレーム意味論 / 名詞転換動詞 / 百科事典的知識 / 共起語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は英語の名詞転換動詞について、コーパスに基づく実証的・理論的研究を行うものである。本年度は次の3点について研究を行った。まず、名詞転換動詞の意味について、表しうる意味と文法の観点から分析し、名詞転換動詞における百科事典的知識(言語話者が持つ事物についての一般的な知識)の果たす役割について特徴づけた。従来より名詞転換動詞の意味と百科事典的知識との関係は指摘されているが、今回の研究によって百科事典的知識は名詞転換動詞の意味の入力になっているだけではなく、とりうる項の選択制限、および特定の意味について、どの名詞が動詞転換可能であるかといった、従来考えられていたよりも広く当該語形成に関与していることが明らかになった。また名詞転換動詞の意味が素の指示対象についての百科事典的知識に由来することを量的に示すために、アメリカ英語コーパスであるCOCAコーパスを使用して、ある名詞と頻繁に共起する語(共起語)を分析し、その名詞から転換された名詞転換動詞の意味との対応を分析した。このことにより言語の意味における百科事典的知識の関与がより客観的な形で示されたことは近年の量的な分析を取り入れた言語研究の流れを踏まえた重要なものである。さらに、従来の先行研究で提案されている、名詞転換動詞の意味パターンについてより詳細な分析を行い、名詞転換動詞を用いた場合では、一般的な表現方法に比べ、特定の意味的含意を持つということが判明した。先行研究においては、名詞転換動詞が用いられる理由として語用論的な観点から表現上の簡潔さ等が指摘されているが、今回明らかになった、語彙的なレベルで名詞転換動詞の特徴はそれらの先行研究の更なる展開に対する経験的な資料を提供する点で非常に重要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の「研究達成度」で挙げた3つの課題に基づいて研究がすすめられ、個々の研究課題に関して研究成果が得られていると同時に、それらに関して学会等で発表できているため、申請者の研究はおおよそ順調に進んでいると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度はいくつかのケーススタディと理論的考察を行い、前年度で得られた名詞転換動詞についての一般的な特徴づけをより具体的なレベルで実証するとともに、認知的・機能的観点から名詞転換動詞の理論化を行う。まずケーススタディとして、いくつかの領域の名詞、特に動物名詞や身体部位名詞など、いわゆる自然物を指す名詞についてデータを収集し分析を進める。これらは何らかの目的や用途のため作成された人工物ではないことから、より多様な種類の百科事典的知識と結びついていることが考えられる。このことはこれらの名詞から作られた名詞転換動詞の意味がより多様になることを予測する。実際、動物に関する予備調査では、動物名詞に由来する名詞転換動詞には共通した複数のパターンが観察されている。同時に、かなりの程度特定のフレームに依存した形でのローカルな動機付けによる、特定の動物を指す名詞の動詞転換も観察された。これらについて個々の名詞の意味構造を分析し、名詞転換動詞と百科事典的知識の関係性について、前年度の研究で得られた一般的な特徴づけをさらに精緻化する。また、関連する百科事典的知識の内、名詞転換動詞によってよりコード化の対象となりやすい知識、すなわち意味の入力になりやすい知識には何らかの一般的特徴があるかを分析する。これにより、百科事典的知識のコード化において用いられる言語リソースの特定と、それによってコード化がなされる過程を記述する。理論的には、フレーム意味論や構文文法の理論に基づき、名詞転換動詞の語形成をフレームと構文の組み合わせと仮定して、当該語形成の背後に存在するメカニズムの解明を目指す。
|
Research Products
(4 results)