2015 Fiscal Year Annual Research Report
光触媒と熱触媒の協奏効果を利用した水を還元剤とする水中硝酸イオン光還元分解
Project/Area Number |
15J05423
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平山 純 北海道大学, 地球環境科学研究院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 地下水浄化 / 選択水素化 / バイメタリック触媒 / 機能分化 / タンデム反応系 |
Outline of Annual Research Achievements |
地下水の硝酸イオン汚染が世界規模で広がっており,清浄な飲料水の確保が難しくなっている.本研究の最終目的は,太陽光を駆動力とし,かつ水を還元剤として水中硝酸イオンを光触媒分解(N-W光分解)する反応システムを開発することである.N-W光分解を進行させるカラクリとして,光触媒反応による水の全分解(水素のその場生成)と水素を還元剤とする硝酸イオン水素化分解(N-H分解)を,水中に存在する別々の触媒上で連続的(逐次的)に進行させることを考えた.N-W光分解系の実現には,(i)水生成反応(H2 + 1/2O2 → H2O)を起こさない,かつ(ii)反応系中に酸素が存在してもN-H分解を選択的に進行させる,の2つの性能を高い次元で具備したN-H分解触媒の開発が鍵を握っている.本研究では,そのようなN-H分解触媒の開発とそれを組み入れたN-W光分解反応システムの実現を目的とする. N-H分解触媒に用いられる金属触媒は,硝酸イオンを亜硝酸イオンへと還元できる碑金属(スズや銅)と亜硝酸イオンを還元できる貴金属(白金やパラジウム)を組み合わせたバイメタリック触媒からなる.そのため,酸素共存下におけるN-H分解触媒を進行させる触媒を開発する際には碑金属と貴金属への影響を考慮する必要がある.本年度は,酸素ガス共存下でのN-H分解を選択的に進行させるバイメタリック触媒の開発に先立ち,まずは貴金属触媒上で水素化分解が進行する亜硝酸イオンを反応気質とした触媒探索を行った.その結果,ルテニウム触媒が水生成反応を抑制し,亜硝酸イオン水素化分解を進行させる触媒であることを見出した.興味深いことに,通常の水素のみを還元剤とした亜硝酸イオン水素化分解の場合よりも,酸素を添加することで飲用に望ましい窒素へと分解した.さらに,酸素が共存した場合に窒素が生成し易くなる理由を,速度論解析から酸素の影響を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸素酸素共存下においても亜硝酸イオンを選択的に水素化分解可能な貴金属触媒(白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム)の探索を行ったところ,いずれの触媒においても酸素が共存していても亜硝酸イオンは水素化分解された.しかし、ルテニウム触媒を除いたいずれの触媒も酸素の共存によって触媒活性は大きく低下した.これは亜硝酸イオン水素化分解に加えて水生成反応が触媒上で併発しているためであった.N-W光分解の達成には,水全分解により生成した水素を還元剤とした硝酸イオンの水素化分解が進行するため,水生成反応が併発しないことが望ましい。ルテニウム触媒は酸素共存下においても触媒活性が酸素を添加していないとき(通常の水素化反応)と同程度であった。言い換えると、ルテニウム触媒は酸素が存在していても,選択的に亜硝酸イオンを水素化できる触媒であると言える.実際,亜硝酸イオン非存在下、水生成反応活性を調べたところ,ルテニウム触媒は水生成反応がほとんど進行しない触媒であった。さらに、興味深いことに生成物選択率も酸素の影響を大きく受けた。酸素が共存することで飲用に望ましくないアンモニア選択率が減少し,95%以上の選択率で飲用に望ましい窒素へと分解された.詳細な速度論解析から酸素の添加効果を調べたところ,酸素は触媒上の水素原子と反応することで、亜硝酸イオンの過剰な水素化生成物であるアンモニア生成が抑制され、窒素の生成反応が優先的に進行することを明らかにした. 酸素共存下において水生成反応を抑制し、亜硝酸イオンを水素化できたルテニウム触媒がN-W分解に適した貴金属触媒であることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
酸素ガス共存下においても硝酸イオンを選択的に水素化分解する担持合金触媒の開発 現在までに,水素と酸素が共存した条件で水生成反応を抑制し,亜硝酸イオンの水素化反応を進行させることができるルテニウム触媒をベースに今後が硝酸イオンの活性化に優れる金属と組み合わせたバイメタリック触媒の開発を行う.具体的には,第二金属の元素選択,第二金属とルテニウムの金属組成比,金属担持量,触媒調製条件,保護剤の種類を幅広くかつ系統的に変化させ,それらが酸素共存下において,硝酸イオン水素化反応特性に与える影響および,触媒構造と反応特性との関係を詳細に調べる.酸素共存下での硝酸イオン水素化分解を選択的に促進する触媒を開発した後に,開発触媒と水全分解を促進する光触媒を組み合わせ,N-W光分解を実現する. タンデム型光電気化学2室セルによる水を還元剤とする硝酸イオン光分解 n型半導体光電極(光アノード,酸素生成側)とp型半導体光電極(光カソード,水素生成側)で構成されるタンデム型光電気化学2室セル(タンデム型セル)によるN-W光分解を検討する.N-H分解を促進する合金ナノ粒子を光カソード上に構築する,もしくは光カソード側のセル内に合金触媒を分散させたタンデム型セルを作成し,可視光N-W光分解が進行することを実証する.はじめに紫外光を光源としたN-W光分解を行い,この反応システムの有効性を検証する.特に前者について,合金ナノ粒子の構造と粒子径制御によって,N-H分解特性と共に光カソードとの親和性を高め,小さな印加電圧で作動させる.その後,可視光N-W光分解へと展開する.
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