2015 Fiscal Year Annual Research Report
触媒ナノ粒子分散プラズマ反応場による二酸化炭素分解とメタン生成
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15J05441
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
都甲 将 九州大学, システム情報科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | メタン化 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、太陽光発電電力の日照変動の影響を緩和することを念頭に、太陽光発電電力を用いてCO2のCH4化を高効率に行うことである。そのための手法として、触媒ナノ粒子分散プラズマ反応場によるCO2のCH4化を考案した。平成27年度は、プラズマ中ナノ粒子制御に関する研究を行うとともに、プラズマによるCO2の高効率CH4化機構を解明する目的で、ヘリコンプラズマを用いてCO2のCH4化実験を行った。得られた成果は次の通りである。(1)プラズマCVD中のナノ粒子がプラズマ中の分子・ラジカル密度へ与える影響を明らかにした。(2)低CO2ガス流量時に高いCH4収率が得られることを見出した。(3)電子衝突によるCH4分解がCH4収率のさらなる向上の妨げとなっていることを見出した。それぞれの研究成果の詳細を以下に述べる。 (1)a-Si:H膜の製膜の際、ナノ粒子によるラジカル損失が製膜速度へ影響するということが確認された。これはプラズマ中に浮遊しているナノ粒子とラジカルの間の特性拡散長が短く、衝突頻度が多いということを示す結果であり、触媒ナノ粒子分散プラズマの有用性を裏付けるものである。 (2)ヘリコンプラズマを用いた実験で、低CO2ガス流量によって、CH4化の反応が促進されることが確認された。低ガス流量では反応容器内のガス滞在時間が増加し、電子衝突によるCO2分解が進むことが、CH4収率の増加につながっていると考えられる。 (3)QMSによって測定したCH4分圧の放電開始後の時間変化を測定した。その結果、CH4分圧はまず(1)急激に減少した後、(2)緩やかに増加し始めることが分かった。(1)は電子衝突によるCH4分解を、(2)はサバティエ反応を通したCH4生成が生じていることを示している。つまり、(1)の反応を抑えつつ、(2)の反応を増加させることが高いCH4収率を得るために必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度においては、従来研究例が無い低圧力条件でヘリコンプラズマを用いた地球温暖化ガスであるCO2のCH4化(資源化)に関する実証研究を行い、高いCH4収率が得られる条件と収率向上のボトルネックを明らかにした。現在は、CH4収率とCH4変換速度の向上に取り組んでいる。 得られた成果から、国際・国内学会にて計10件の発表を行った。また、筆頭著者として査読付英文論文1編掲載済み、1編採択済み、さらに1編の論文を執筆中である。 さらに、CO2のCH4化に関する成果は、火星からの帰還用ロケット燃料の火星大気(CO2が主成分)からの生成に適用出来る可能性がある。このことが注目されJAXAとの共同研究として新たな展開にも繋がっている。これまでの研究はおおむね順調に進展しており、今後はより大きなインパクトのある、汎用性のある成果に発展させることを目標としている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、上述の成果を考察・発展させ、より高いCH4収率の達成を目指す。具体的に予定している研究は、(1)Ni/Zeolite触媒ナノ粒子担持回転ディスクとプラズマを併用した高変換率高選択率反応(2)状態変化を利用したCH4/CO2分離、である。各研究の詳細を以下に示す。 (1)本研究では、触媒担持回転ディスクを用いることで、H2+CO2プラズマと触媒の併用による反応性向上とH2プラズマによるゼオライト触媒からのH2O脱離を連続的に行う。本研究で期待される効果は、1.ゼオライトのナノ空間への水吸着を活用したCO生成のないCH4選択的生成、2.ナノ粒子のプラズマ加熱による、室温ガス雰囲気での高活性触媒反応の実現、3.2つのプラズマと触媒担持ディスクの回転によるCH4生成とH2O除去のシームレス反応実現、である。 (2)状態変化を利用したCH4/CO2分離 物質の状態変化を利用して、未反応物/目的生成物/副生成物を分離する。これによって未反応物や副生成物を再利用し、効率良く変換を行うことが狙いである。精錬の手間も省けるため、大幅なコストダウンも見込める。
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