2015 Fiscal Year Annual Research Report
オプトジェネティクスを用いたMuse細胞の分化メカニズムの解明
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15J05551
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
五十嵐 敬幸 東北大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | オプトジェネティクス / カルシウムシグナル / オルガネラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高い時空間分解能での細胞内カルシウムシグナルの制御により、活動依存的な多能性幹細胞の分化メカニズムの解明を目指す。その実現に向けて、細胞内カルシウムストアとして機能する小胞体局在型オプトジェネティクスツールの開発とその機能解析を行った。 細胞内からのCa2+放出を選択的に制御するために、細胞内Ca2+ストアである小胞体に特異的に局在する光応答性のカチオンチャネル(ChRER)を開発した。緑藻類由来の光感受性カチオンチャネルであるチャネルロドプシン(ChR)改変体に小胞体係留シグナルを付加し、イオン選択性、光応答特性を最適化した複数種類のプラスミドの作製に成功した。 ①局在解析:複数の細胞種へChRER(改変体3種類)を遺伝子導入し、発現を確認した。組織学的局在解析では、小胞体マーカーであるKDEL,ER-trackerとの共局在を示し、細胞膜マーカーWGAとは共局在しないということが超解像顕微鏡下で確認された。 ②Ca2+イメージング:ChRERが光に同期して開口しているかを確かめるために、タンパク質性赤色蛍光カルシウムセンサーR-CaMP1.07を用いた生理学実験を行った。R-CaMP1.07陽性の細胞集団において、青色LED光刺激に同期して赤色蛍光が増加した。この光刺激応答性の赤色蛍光増強は、細胞外Ca2+非存在下でも消失しなかったことから、細胞内Ca2+ストアからのCa2+放出が光刺激によって誘起されていることが示唆される。 ③膜電位変化解析:細胞膜上のChRER発現の有無を確かめるため、パッチクランプ法により光刺激前後の細胞膜電位の変化を計測した。ChRER発現細胞では光電流は観察されなかったことから、細胞膜上にChRERが発現していないことが示された。 以上の結果より、ChRERの利用により、細胞内からのCa2+放出を選択的に、光で制御できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度においては小胞体局在型オプトジェネティクスツールの開発に成功し、組織学的局在解析・パッチクランプ法を用いた電気生理学的実験・カルシウムイメージングによる生理学的機能の評価を行った(研究室の代表的な研究成果として、生理研研究会において口頭発表)。また、オプトジェネティクスやコネクトミクスなど、最先端の神経科学研究に資する新規トランスジェニックラット 4系統(寄託手続き中の系統を含む)を作製し、ナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」( http://www.anim.med.kyoto-u.ac.jp/nbr/Default_jp.aspx )を通じて世界中の研究者に提供している。これらの研究成果は、査読のあるオープンアクセス国際誌に1報報告しているとともに、First & corresponding author論文を1報投稿中である。国際学会で3件、国内学会で5件(うち口頭発表2件)において発表していることから、進展が順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた結果より、ChRERの利用により、細胞内からのCa2+放出を選択的に、光で制御できることが示唆された。今後はこのツールを用いて多能性細胞の分化メカニズム及び筋や神経細胞の機能獲得プロセスに関する新規知見を得る。現在は筋芽細胞株を用いて、収縮機能の獲得において必須とされる最小構成単位(サルコメア)の形成が細胞内Ca2+放出に付随して促進されるという仮説の検証を進めている。
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Research Products
(8 results)