2015 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病脳老人斑構成成分CLAC-Pの中枢神経系における生理機能の解明
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15J05680
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宗實 悠佳 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / コラーゲン / 神経生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は、CLAC-P/Collagen XXVがシナプス接着分子である、受容体型チロシンホスファターゼ(RPTP) の結合分子であることを見出しており、CLAC-PがRPTPと協調的に働き、中枢神経系、特にシナプスにおいて重要な機能を担う可能性を着想し、研究を進めている。
報告者は、RPTPを発現させた培養細胞へ、リコンビナント分泌型CLAC-P(sCLAC) を添加する実験から、両者が特異的に結合することを見出した。更に、sCLACがRPTPのあらゆるホモログ、選択的バリアントとも結合することを同様の実験系から見出しており、この結果は、CLAC-PがRPTPの機能に広く関わっていることを示唆したものと考えている。また報告者は、ドメイン欠損型RPTP発現細胞に、sCLACの添加を行い、結合ドメインの同定を試みた。Immunoglobulin-like(IG)ドメインを欠いたRPTPにはsCLACが結合しなかったことから、両者は、RPTPのIG ドメインを介して結合していることが明らかとなった。 一方、CLAC-P発現細胞にリコンビナントRPTPを添加しても、両者の結合が認められないという結果も得ており、分泌型CLAC-Pの機能的重要性についても、現在注目しているところである。 また近年、CLAC-Pの変異がヒトの先天性脳神経支配異常症(CCDD) の原因となるという報告 (Shinwari et al., 2015) を受け、変異型CLAC-Pの生化学的解析にも注力している。本来CLAC-Pは、三重らせん構造を有する、三量体を形成することから、加熱に対して耐性を持つため、Trypsinの消化を受けない。しかし、変異型CLAC-Pでは低温加熱でTrypsinの消化を受けたことから、不安定なコラーゲン構造を有していることを明らかにした。ヒト変異の解析は、CLAC-Pの生理機能解明に当たり、重要な手がかりになると考え、今後も解析を進めていく方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度研究計画は、①神経系特異的CLAC-P欠損成体マウスを用いた解析 ②in vitroスクリーニングにより得られたCLAC-P結合候補分子の2次スクリーニング ③CLAC-Pが、シナプス形成・軸索伸長に与える影響についての機能的アッセイ ④CLAC-P欠損ADモデルマウスの作出であった。 まず、①については、神経系特異的cKOマウスであるNestin-Cre; CLAC-Pfloxマウスを用いて、予定通り解析を行うことができた。具体的には、先述マウスの脳切片を作製し、HE染色による組織学的な解析、及び、免疫組織化学により、シナプス形成を主眼に解析を行った。その結果、CLAC-P欠損固体の脳では、大きな異常が認められないことを確認した。②についても、予定通り、結合候補分子とCLAC-Pの結合アッセイを完了し、CLAC-Pはいずれの候補分子とも特異的な結合を示さないという結果を得た。これを受け、in vivoでの結合分子探索に向け、タグ付加CLAC-Pノックインマウス作製準備に着手した。既に発現コンストラクトの作製は終了し、タグ付加CLAC-Pの性状確認の解析を開始している。③については、具体的な機能アッセイには着手できていないが、その準備段階として、RPTPとの結合様式の解析は進展し、更に新たに見つかったCLAC-Pの変異の解析も合わせ、生理機能解明に近づけていると考えている。最後に④は、予定通り交配準備が進んでいる。 以上の理由から、研究計画は、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、CLAC-PがRPTPと協調して神経系において機能している可能性が示唆されている。H28年度は、①CLAC-Pの機能アッセイを展開していくと共に、②変異型CLAC-Pの解析にも注力したいと考えている。 具体的には、①現在、CLAC-PとRPTPは直接結合するのではなく、他の分子を介した間接的な結合であるという結果を得つつある。このことは、CLAC-Pが積極的なシナプス誘導に関わるのではなく、シナプス形成に間接的な役割を有する可能性、または、軸索伸長などシナプス形成とは異なった文脈において、RPTPと協調して機能している可能性を示唆していると考えられる。今後、CLAC-Pの機能を明らかにする上で、初代培養神経細胞を用いて、CLAC-PがRPTP依存的シナプス誘導に与える影響について検証を行っていきたい。更に、軸索伸長という観点においては、初代培養神経細胞、或いは脊髄前角より摘出した運動ニューロンを用いて、CLAC-Pが果たす役割について解明していきたいと考えている。②また、変異型CLAC-Pについては、膜への輸送効率や分泌効率に着目した生化学的アッセイを行うと共に、RPTPとの結合についても解析し、疾患発症のメカニズム解明に貢献したいと考えている。
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Research Products
(1 results)