2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J05710
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
中村 和樹 豊橋技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ホログラフィックディスプレイ / 磁気ホログラム / 磁性フォトニック結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は脳科学分野への応用可能な磁気光学3Dディスプレイの開発を目的とし,視野角30度以上,フレームレート30 fps以上を実現するホログラフィックディスプレイの開発を行う.また,表示像は,sRGB規格に準拠したフルカラーとする.これは,従来ホログラフィックディスプレイの課題であった,ディスプレイの高解像度化とそれに伴う画素制御の困難さを解決し,ホログラフィの利点であるリアルな3D像の表示によって,遠隔地医療を初めとする我が国のライフイノベーションに大きく貢献することが期待できる. 本年度は,主にディスプレイ動作の原理実証およびカラー像表示用メディアの設計を行った.ディスプレイ動作の原理実証では,パルスレーザを用いた熱磁気記録と,外部磁界によるリフレッシュを行うシステムを構築した.これにより,ワイヤーフレームのキューブが回転する動画(ピクセルサイズ13.6 μm,画面解像度367×367画素,フレームレート10 fps)を表示した.また,空間分割方式によるsRGB規格準拠の色調表現を行えるメディアを作製するために,マルチキャビティ磁性フォトニック結晶(マルチキャビティMPC)を設計した.RGBそれぞれに対応した3層の磁性層を有するMPC構造をマトリックスアプローチ法を用いて設計した.RGBそれぞれ100 cd/m2の輝度の画像を再生した場合に,各磁性層が設計外の波長の再生像の輝度に与える影響は,最大で2%以下であり,各色をそれぞれの欠陥層から独立して再生できるメディアを設計できたと考えている.結果として,磁気メディアの情報書き換えによる動画表示の実証,単一メディアで空間分割方式と同等の画像表示が可能な磁気メディアの設計等,各要素開発において目標の達成が可能であることを示し,順調な推移を見せている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,磁性メディアによる動画表示の原理実証を中心に研究を進めた.これまで,静止画の磁気ホログラム等を用いた実験により,磁性メディアを用いた動画表示が可能であることは予測されていた.そこで本年度では,動画速度(10 fps)で磁性膜上にホログラムを形成できる熱磁気記録系および,磁気ホログラム消去の為の外部磁界印加系(400 Oe, 10 Hz, パルス幅5 ms)を構築し,これらを組み合わせることで磁性メディアを使ったホログラムの動画表示が可能であることを示した.今回構築したシステムにより,動画の表示に必要な基本的な機能はすべて実現できたといえる.しかし,光学系の性能不足により,記録可能な磁気ピクセルのサイズが目標よりも大きくなってしまった.今後は光学系の改善によりピクセルサイズの縮小を行い,当初の目標を達成できると考えている. さらに,空間分割方式によるsRGB規格準拠の色調表現を行えるメディアを作製した.ホログラフィックディスプレイのカラー表示において,空間分割方式は非常に有効な手法であるが,各色の照明光の光軸の確保等でシステム全体の光学系が煩雑になる課題があった.そこで,磁性フォトニック結晶の光局在効果に着目した.局在波長の異なる構造を3つ組み合わせることで,見かけ上単一のメディアで空間分割表示を行うことができる構造を,マトリックスアプローチにより設計した.この構造により,ディスプレイシステムの再生照明系の大幅な簡略化が期待できる.また,このメディア設計に並行して,記録光と再生用照明光を光学的に分離する構造についても設計を行った.次年度では,このメディアを熱磁気記録系に組み込むことでフルカラー動画の表示を行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では,動画表示用熱磁気記録系および再生系の構築を行い,磁気光学3Dディスプレイによる動画表示を実現する.本年度表示された動画が低フレームレートに限定された主な原因として,熱磁気記録に使用するレンズアレイのピッチ間隔が大きく,熱磁気記録に時間を要したことがあげられる.そこで,本年度はこれらの最適化を行うことで,動作を高速化し,視野角30度,フレームレート30 fpsの動画表示を行う.そこで,下記に計画に沿って研究を進める. ①熱磁気記録用レンズアレイの設計.昨年度の結果から,要求されるレンズアレイの性能は,光のon/off制御に使用する空間光変調器のピクセルピッチと同等のレンズピッチであり,かつそれぞれのレンズが記録光を1μm程度まで集光できることが望ましい.上記条件を満たすレンズアレイを光線追跡シミュレーション等によって設計する. ②カラー表示用メディアの作製.本年度設計したカラーメディアを作製し,動画システムに組み込むことで,カラー像の表示を行う.この際,本年度設計した再生像の視聴時にノイズ源となる記録光を遮断できる構造と組み合わせる.これにより,動画表示時にノイズとなる記録光を遮断する.③立体像の評価と改善.②までに作製したシステムおよびメディアを使用して,脳の構造機能に相当する画像の表示を行い,デバイスの評価・改善を行う.その際,ピクセル位置を記録光によって制御できる本ディスプレイの特長を活かして,画像の品質向上について研究する.
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Research Products
(8 results)