2015 Fiscal Year Annual Research Report
炭素-水素結合活性化を利用する新規アライン発生法の開発
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15J05711
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
山内 貴之 岐阜大学, 工学部, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 炭素ー水素結合活性化 / アライン / 遷移金属触媒 / ヘテロアレーン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高い反応性を示すアラインの遷移金属触媒を用いた新規発生法の開発を行うことを目的としている。本年度は、まず研究計画に従って、最適な触媒の開発に取り組んだ。計画した触媒を作成し、実際に反応に利用したが、有効な触媒ではなかった。しかし開発した触媒は、通常は容易に遷移金属触媒と反応する部位とはあまり反応せず、その一方で通常は不活性な部位を優先的に反応させられることを発見した。一般に用いられる触媒系で同様の反応を行うと、反応は複雑化し、開発した触媒が特異的な反応に利用できることが明らかとなったため、本計画とはやや外れるが、この反応について詳細に検討した。その結果、様々な基質を本反応に利用することが可能であった。また、本反応を利用することで、これまで他段階の合成工程を必要とした2,4-置換イミダゾールや医薬品候補の抗アレルギー活性化合物の従来法よりも効率的な合成も達成し、開発した反応の有用性を示すことができた。また、本触媒は強力な触媒毒として作用するチオカルボニル基を有する化合物への芳香族官能基導入反応に利用できることを発見した。近年、チオカルボニル基を有する有機半導体材料が注目されており、チオカルボニル化合物への芳香族官能基の導入法が求められていたが、これまで有効な手段がなく、本反応が初の例であったため、詳細に検討した。その結果、一般に提案されている触媒サイクルとは異なる機構で進行していることを示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この評価の理由は、開発した触媒の有用性を見出すことができ、従来の触媒では実現できなかった反応が達成できたためである。これらの結果はいずれも、アメリカ化学会の学術誌に掲載することができ、さらに、これをまとめた博士論文発表会では、研究結果が認められ平成27年度の学業成績表彰に選ばれた。目的である炭素―水素結合活性化によるアラインの発生には、まだ時間を要するが、これらの業績から、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
反応がうまく進行しなかった理由として、原料は完全に消費されていたことから、触媒が原因ではなく、基質の分解が問題と考えている。そのため、基質の分解を抑えるため、より温和な条件、つまり温度を下げて反応を検討する。また、基質に隣接配向基と呼ばれる、意図した位置に触媒が接近しやすくなる仕掛けを導入した基質を用いて反応させることを考えている。また、検討した結果によっては、当初計画していたPdと窒素系二座配位子の組み合わせから離れて、他の遷移金属や配位子を用いて検討する。
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Research Products
(4 results)