2015 Fiscal Year Annual Research Report
労働市場の新自由主義的再編と労働市場の仲介者に関する地理学的研究
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15J05738
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小谷 真千代 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 労働の地理学 / 労働市場 / 労働市場の仲介者 / 移民 / 新自由主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の代表的な「労働市場の仲介者」たる業務請負業に焦点を当て、日本の基幹産業における下請労働市場の社会・空間的変容を明らかにするとともに、労働市場の仲介者と新自由主義的な労働市場再編との関係性を解明することである。 本年度は主として、戦前、重工業を中心に都市化/工業化した兵庫県神戸市を対象に、造船業・港湾運送業史に関連する文献や資料、および前述の産業跡地の再開発事業に関する文献や資料収集を行った。これらの資料から得られた知見をもとに、神戸における労働市場と都市空間の変容を検討した。その際、工場や労働者の住居の立地など物質的な側面のみならず、産業・労働の表象の側面に注目した点は、本研究の独自性のひとつである。 研究成果の一部は、The 11th International Symposium for Seaport Cities Studies、および2015年日本地理学会秋季学術大会において発表し、『海港都市研究』上で論文を公表した。 上記の活動と平行して、1970年代以降軽工業を中心に工業化/都市化した岐阜県美濃加茂市を対象に、電機工業(ほか製紙業史)と移民に関わる文献を収集し、業務請負業の経営者・日系移民を中心とする請負労働者に対する聞き取り調査を継続している。また、英語圏の労働の地理学を中心に文献を収集し、自主研究会等を通じて翻訳しつつ、新自由主義・労働市場の仲介者に関わる地理学理論の吸収に努めてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神戸での調査については、おおむね順調に研究をすすめることができた。国内のみならず国外で研究成果報告の機会を得られたこと、それによって海外の研究者とも情報交換を行えたことは、本研究を進展させるうえで意義があったと言える。 ただし、当初計画していた海外での調査は、調査対象者との日程調整の結果、来年度に延期するものとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、岐阜県美濃加茂市を対象にした調査を継続するとともに、経済危機以降ブラジルに帰国した元業務請負業経営者や請負労働者らに対する聞き取り調査を実施する予定である。今年度は、調査から得られた知見を国内の社会学会および地理学会で報告することで、地理学にとどまらない分野の研究者と意見を交わしつつ研究を進めていく。 さらに、神戸および岐阜における調査研究で得られた知見を比較検討することで、1970年代以前・以後の基幹産業における下請労働市場の社会・空間的特性を明らかにし、その歴史的断絶・連続性を検討したい。そのうえで、これらの実証研究を最新の地理学の議論へと接続することを目指す。最終的には、本研究の研究成果を博士論文として提出する。
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Research Products
(4 results)