2017 Fiscal Year Annual Research Report
西アフリカにおける「アーティスト」の人類学:モノ、市場、制度に注目して
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15J05758
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
緒方 しらべ 九州大学, 比較社会文化研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2019-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 芸術の人類学 / アフリカ美術 / アート / アーティスト / ナイジェリア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、出産のため4月から9月までの6カ月間のみ研究を行った。この間はナイジェリアでの調査およびガーナでの発表は行わず、1)国内調査、2)日本国内の美術館・博物館・商業施設での調査、3)文献調査、4)国内研究会への参加に従事した。 1)アーティストのネットワークについて、西アフリカのケースを日本国内のケースと比較して検討するために、東京でグラフィックデザイナーの活動について調査を行った。東京在住のグラフィックデザイナーと、彼らの活動と重要な関わりをもつ紙業会社員にインタビューし、アーティストがどのような職や権威をもつ人たちとネットワークを築いて活動しているのかを調査した。これと関連し、「日本のグラフィックデザイン2017」の展示も調査した。 2)日本の商業施設でのアフリカ美術やアフリカ表象の受容を検討するために、東京渋谷の西武百貨店で行われた写真家ヨシダナギ氏の写真展、およびヨシダナギ氏によるアフリカ表象と服飾販売の協働を調査した。国内の美術館・博物館という制度の中でのアフリカ美術の受容を調査するために、学術文化総合ミュージアム・インターメディアテクの常設展の定期調査も行った。また、アフリカ美術と比較・対照させ、日本国内における同時代のアートおよび美術品の受容を検討するために、船橋市飛ノ台史跡公園博物館(縄文コンテンポラリー展)、河口湖美術館、久保田一竹美術館での調査を行った。 3)アートというものの見方や解釈をより多角的に検討するために、美学と現代美術市場に関する文献を入門書から調査した。 4) 去年度に引き続き「同時代(現代)アートと人類学」研究会に参加し、アートという制度について、キューバ、メキシコ、中国と西アフリカのケースを比較・検討した。また、国際シンポジウム「プレザンス・アフリケーヌ研究:超域的黒人文化運動の歴史、記憶、現在」に参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、西アフリカのナイジェリアの都市を中心に、アートを取り巻く人、モノ、制度の関係に注目することを通してアートの市場や価値・基準、および、そこに存在する力がいかに成立しているのかを明らかにすることで、既存の西洋近代の美術(アート)界とは異なる、また、それをつくりかえてゆくようなアー」の動態を探ることである。 この目的を達成するために、アートを生産する側である西アフリカのアーティストと、それを受容する側である西アフリカ内外の市場と制度の関係を、個々人の具体的な行為とモノや制度の具体的な特徴の存在に焦点をあてて考察しなければならない。本年度は、去年度に引き続き、日本でのアフリカ美術の受容やアートに関する理論的研究(文献調査)はおおむね順調に進めることができた。しかし、体調を考慮したため、課題としていた海外調査と昨年度までの研究成果の発表を行うことができなかった。このために、本研究の進捗はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
出産・育児による採用中断期間(10か月間の予定)を終え、採用が再開された後の8か月間(そのうち4か月間は研究再開準備支援期間の予定)は、今年度の6か月の研究期間中に成し遂げられなかった論文2本(和文1、英文1)で研究成果を発表できるよう、執筆を進めていく。また、育児の様子を見ながら、可能であれば海外調査も再開し、あわせて研究成果として発表できるよう、調査データの分析と論文の執筆に努める。これと並行し、本研究の重要な課題の一つである、既存の文化人類学に対してどのように本研究が貢献しうるかという点を常に明瞭にしながら、3年間の研究の考察を行っていく。
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