2015 Fiscal Year Annual Research Report
ウィーン体制に対するロシアの役割―ニコライ一世時代の会議外交への関与からー
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15J05807
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
矢口 啓朗 東北大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 会議外交 / ベルギー独立問題 / ロシア外交史 / 両海峡通航権問題 / 第2次シリア危機 / ウィーン体制 / ロンドン会議 / ダリヤ・リーヴェン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ロシア外相のカール・ネッセルローデによる、皇帝ニコライ一世への報告や各国大使館とのやり取りに加えて、駐英大使夫人ダリヤ・リーヴェンによる、イギリスの政治家らとの手紙や書簡を基に、ベルギー独立問題を巡るロシアの軍事介入構想を分析することで、会議外交に対するロシアの政策を検証した。 ロシアは、1830年11月4日から開催されたベルギー独立問題を巡るロンドン会議において、議長国のイギリスから、ベルギーへの軍事介入の支持を得ようとしていた。外交官と外相の公的なやり取りだけでなく、ダリヤの書簡からも、ロシアのロンドン会議への関与を分析することで、介入に理解を示しつつも、レームダック化していた保守派のウェリントン政権を維持すべく、ロシアが画策していたことが明らかになった。しかし、リベラルで軍事介入に消極的なグレイ政権の成立は、ロシアにロンドン会議を通じた軍事介入をあきらめさせ、ロシア・オーストリア・プロイセンの3か国による、ベルギーへの軍事介入を構想させたこと、さらに介入を巡って、イギリスを四国同盟から追い出そうと考えていたことを発見した。 この成果については、「ベルギー独立を巡るロシアの行動」という題目で、日本国際政治学会2015年度研究大会(ロシア東欧分科会)で研究報告を行った。発表に際して、報告ペーパーを執筆しており、報告で得られた指摘を踏まえて、今後の研究に活かしたい。 この他にも、ICCEES第9回世界大会において、1839-1841年の第2次シリア危機を巡るロンドン会議におけるロシアの政策について発表し、ロシアが東方問題において、ヨーロッパ協調の論理に基づいて行動していたことを指摘した。こちらにおいても国内外の研究者から多数のコメントを受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、主にベルギーへのロシアの軍事介入構想を軸に、ロシアと会議外交の関連を分析した。ロシア外務省刊行の『ロシア対外政策』、フランスの駐英大使であるタレーランと本国の通信をまとめたCorrespondance Diplomatique de Talleyrand: Ambassade de Talleyrand; Londres 1830-1834に記載されている史料に加えて、ロシア駐英大使夫人ダリヤ・リーヴェンの残した手紙や書簡を用いることで、公的な会議における外交官の働きに、私的な社交界での政治家や外交官どうしの交流という側面を加えて、会議外交の進展を検証することができた。 またICCEESでの報告を通じて、第2次シリア危機を巡るロシアと会議外交の関連についても分析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、引き続きベルギー独立問題だけでなく、第2次シリア危機を巡り開催された、ロンドン会議におけるロシアの外交政策も検証することで、会議外交におけるロシアの政策に、どのような特徴があったのかを検討する。そのために、ロシアの公文書館での史料収集を行い、その結果を踏まえて、年度内に査読付き学術雑誌への投稿を目指す。
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Research Products
(3 results)