2015 Fiscal Year Annual Research Report
神経分化誘導によって産生されるホスファチジン酸分子種の同定とその機能の解析
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15J05821
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
水野 悟 千葉大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ホスファチジン酸 / ジアシルグリセロール / ジアシルグリセロールキナーゼ / 神経分化 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は研究実施計画に従い、16:0/16:0-ホスファチジン酸 (PA) の上流シグナルの解析を行った。マウス神経芽細胞腫であるNeuro-2a細胞にレチノイン酸 (RA) を処理して神経様細胞へと分化誘導を行った後、液体クロマトグラフィー (LC)/質量分析 (MS) を用いて細胞内PA分子種の量的変化を解析した。その結果、32:0-PA (2つの脂肪酸の炭素数の総和:不飽和度の総和) の顕著な増加が認められた。また、32:0-PA量はRA添加後、24から48時間で最大となった。さらに、MS/MS解析により32:0-PAは2つのパルミチン酸 (16:0) を有するPA分子種であることが分かった。 16:0/16:0-PAの産生経路について調べたところ、ホスファチジルイノシトール (PI) -PLCの阻害により16:0/16:0-PAの産生は強く阻害された。さらに、PI-PLC代謝産物であるジアシルグリセロール (DG) 量はRAによる顕著な増加が認められた。次に、哺乳動物で同定されている10種のDGKアイソザイムについて逆転写PCR法を用いて調べたところ、Neuro-2a細胞では特にDGKδとDGKζの発現が高かった。そこで、DGKδ及びDGKζの16:0/16:0-PA産生に対する影響を調べた。その結果、DGKδの発現抑制は16:0/16:0-PAの産生を抑制しなかったが、DGKζの発現抑制は16:0/16:0-PAの産生を抑制した。また、DGKζの発現抑制はRAによる神経突起形成を抑制した。 以上の結果より、今年度の研究では、RAによる神経分化誘導でPI-PLC/DGKζを介した16:0/16:0-PAの産生経路を同定し、更に16:0/16:0-PAの産生抑制が神経突起形成を阻害することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、研究実施計画に従って16:0/16:0-PAの上流シグナルについて調べた。阻害剤やRNA干渉を用いて、16:0/16:0-PAが神経分化の初期にPI-PLCとDGKζを介して産生されることを明らかにした。さらに、DGKζの発現抑制により神経突起形成が抑制されることが分かった。DGKζの直接的な16:0/16:0-PA産生能を調べるための触媒活性欠失型DGKζ変異体の安定発現株は現在作製中である。 一部進行中の研究もあるが、平成27年度の目標であった神経分化における16:0/16:0-PA産生経路の同定は概ね達成されたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね順調に進展しているため、大きな変更なく計画通り進めていく。平成28年度は、研究計画に従い16:0/16:0-PAの下流シグナルを調べる予定である。16:0/16:0-PAを含むリポソームを用いて、神経突起形成への影響の確認や16:0/16:0-PA高親和性のターゲット蛋白質の同定を行い、神経突起形成における脂質産生と生理現象とをつなぐ詳細なメカニズムを明らかにしたい。
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