2016 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム編集技術を駆使した疾患モデル両生類作製法の確立
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15J05833
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坂根 祐人 広島大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / CRISPR-Cas / ツメガエル / 疾患モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒト疾患研究の新しいモデルとなる遺伝子改変ツメガエルを作製するため、ゲノム編集技術の開発を目的としている。 本年度はネッタイツメガエルにおいてゲノム編集効率を向上させるために、リコンビナントCas9タンパク質とsgRNAをリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体(以下Cas9/sgRNA RNP)として導入する条件検討を行った。Burgerら(2016)の実験に用いたBuffer組成に基づいてCas9/sgRNA RNPをネッタイツメガエル受精卵に導入したところ、孵化前後に奇形が生じ、正常発生率の低下が確認された。そこで、Buffer組成を変えて検討したところ、正常発生率が高いままに、シビアなノックアウト表現型が高効率で得られる条件を確立した。ヒト遺伝性疾患の原因遺伝子5種類を標的とするsgRNAを作製しこの条件で顕微注入した結果、生存胚のほぼ全ての胚でシビアな表現型が得られた。次世代シークエンサーを用いてアンプリコン解析を行ったところ、解析した胚の全てにおいて変異導入効率が98%を超え、中には野生型アリルが検出できない、つまり、ほぼ100%の変異を持つ個体が複数確認された。この確立したプロトコールは、Cas9mRNAを用いた従来のプロトコールと比較しても、非常に高効率である。 加えて、昨年度に引き続き、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)を利用して、ヒト疾患変異型 cDNAをノックインすることで疾患モデルツメガエルの作製を試みている。本年度は上記で確立したCas9/sgRNA RNPによる導入実験も開始した。現在、ファウンダー世代でPCRによるジェノタイピングを行い、標的領域への外来遺伝子の挿入を確認できた個体を得ている。シークエンス解析の結果MMEJ依存的なノックインが起こっていることを確認している。これらの個体についても次世代子孫を得るために飼育中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
該当年度、リコンビナントCas9/sgRNAリボヌクレオタンパク質(Cas9/sgRNA RNP)複合体を用いた、非常に高効率なノックアウトプロトコールを確立することができた。変異導入効率が非常に高いこと、変異アリル数が少ないことから胚発生の早い段階でCas9がDNA二本鎖切断を引き起こし、修復系を誘導していると示唆される。このことから、ノックイン実験でもCas9/sgRNA RNPを用いることで、早い段階でマイクロホモロジー媒介末端結合を誘導し、ノックイン効率の上昇が期待される。これまでに、Cas9/sgRNA RNPとドナーベクターを共導入したファウンダー個体を作製しており、標的領域への外来遺伝子の挿入が確認された個体も得ている。以上のように、Cas9/sgRNA RNPを用いた高効率なin vivo遺伝子ターゲティングの確立は予想を上回る成果であり、当該年度の進捗状況はおおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、Cas9/sgRNA RNP導入により標的領域へ外来遺伝子の挿入が確認された個体を育て、次世代子孫の作出を目標とする。得られたF1個体はPCRなどによってジェノタイピングを行い、ノックインの精査を行う。ノックインの確認された個体に関しては、ヒト遺伝性疾患と類似した表現型が生じるかを検証し、疾患メカニズムの解明に向けて組織学及び分子生物学的に精査する予定である。
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Research Products
(4 results)