2015 Fiscal Year Annual Research Report
太陽系小天体の表層構造および表面衝突進化の理解に関する実験的研究
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15J05840
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木内 真人 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 小天体 / 衝突クレーター / 微小重力 / 真空 / 衝突実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,小惑星などの小天体の衝突過程を通した表面進化の過程の解明を目標とする.小天体表層は衝突クレーターが主要な地形となっており,表面の大部分は粒子層によって覆われている.小天体表面の衝突クレーターから天体表層の物性や構造,表面年代などを推定することにより,小天体の熱進化・衝突進化の過程を理解することができると考えられる.これらの情報を得るためには,微小重力下・真空下における粉体層への衝突過程の理解が必要である.我々は,模擬低重力下で粉体標的に対して衝突実験を行うことで,微小重力が衝突クレーターサイズに与える影響を調べた.また,真空チャンバ内で粉体標的に対して衝突実験を行うことで,大気の存在が衝突クレーターサイズに与える影響を調べた.実験の結果,これまで衝突クレーター形成に関して未解決だった事象について,以下の新たな見地を得た. ①大気下で0.01-1Gの範囲で重力を変化させたとき,クレーター直径は重力加速度のべき乗に比例することを確かめた.また,粉体標的の種類に関わらず同様の重力依存性を示すことを確かめた.②真空下(7Pa)で形成されるクレーター直径は大気下で形成されるものよりも大きくなるという結果を得た.この要因として,クレーターが掘削されているときに動く粒子にはたらくガス抵抗の減少であることを示唆した.減圧下でのガス抵抗はエプスタイン則に従うことがわかった.また,重力依存性は大気の影響を受けないということがわかった.③過去研究の高速度衝突実験(数km/s)ではクレーター直径は衝突エネルギーに依存しないが,本研究の低速度衝突実験(数m/s)では衝突エネルギー依存することがわかった.この結果の要因として,弾丸の潜り込み深さが関係している可能性が示唆される. 上記の成果を国内・国際学会で発表した。また,論文にまとめ査読付英文専門誌に投稿する準備を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた重力範囲での実験を行い,その範囲でのクレーター直径の重力依存性を得ることができた.また,大気がクレーター形成に与える影響についても予定通り観察することができた.また,当初の予定ではなかったが,真空下でのクレーター形成実験を重ねた結果,真空度によって形成されるクレーター直径が異なる要因についても知見を得ることができた.さらに,高速度域と低速度域の結果をつなげることについても予定以上に進展した. しかし,小天体表層により近い極真空領域での粉体層のふるまいを調べる実験(空隙率や内部摩擦角の測定など)を予定していたが,極真空領域での実験を可能にする装置の開発が予定よりも進まず,今後の課題になっている.具体的な理由として,真空チャンバや真空ポンプの設置,チャンバ内で遠隔的に操作・測定を行う装置の開発に難航していることが挙げられる.
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Strategy for Future Research Activity |
現在の低重力を模擬する装置で実現できる重力加速度は0.01 G程度が下限値であるが,多くの小天体表面の重力加速度は0.001 G以下である.本研究の装置で得られた重力依存性がさらに微小な重力環境に外挿できるかどうかを確かめるため,北海道赤平市の50 m落下実験塔/植松電機(株)を使用する.同装置では0.0001 Gの微小重力を実現でき,また微小重力継続時間も3秒程度と長い.落下カプセル内に衝突装置一式を搭載するため,専用の実験装置を製作する. LED光源,電子部品,光学部品を用い,衝突装置に設置する光源を自作する. また,極真空領域での粉体層の空隙率や内部摩擦角の測定を行い,現在の実験条件(大気圧から数Paの範囲)での粉体層のふるまいと比較する.その結果をもとに,極真空領域でのクレーターサイズについて推測する.これは極真空領域でのクレーター形成実験が現実的に難しいためである. これまでのクレーター形成実験をもとに衝突クレーターサイズの重力依存性・真空度依存性・衝突速度依存性を定量化し,小天体表層の衝突進化について総合的な推定を行う. 得られた成果を国内学会,国際学会で発表報告し,また博士論文にまとめ査読付英文専門誌に投稿する.
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Research Products
(7 results)