2015 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムの遺伝子発現を自由自在に光制御する技術の創製とその応用
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15J05897
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
二本垣 裕太 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞分化、代謝、記憶の形成などの様々な生命現象は、複雑で動的な遺伝子発現パターンによって制御される。故に、これらの現象における遺伝子の機能解析において、対象遺伝子配列の書き換えや発現の制御を、意図した時と場所で自由に行える手法は、極めて有効である。近年、細菌や古細菌が持つCRISPR獲得免疫システムを構成するタンパク質であるCas9を応用する事で、対象とする遺伝子配列の編集を、様々な生物種で簡便に行えるようになった。Cas9は、ガイドRNAと複合体を形成し、ガイドRNAの5’末端に相補的なDNA配列をゲノム上から検索し切断する。このDNAの二本鎖切断が、非相同末端再結合か相同組換えの機構によって修復される事を利用して、遺伝子ノックアウト、変異導入や外来遺伝子の挿入などが行える。しかし、Cas9による遺伝子操作を狙ったタイミングや狙った細胞でのみ起こす事は実現されておらず、そのためこれらの応用には様々な制約が課せられていた。この問題点を克服するため、申請者は、この標的遺伝子の配列や発現を変えられるCas9と、光感受性タンパク質を用いて生命現象を光によって操作するオプトジェネティクス(光遺伝学)技術を組み合わせ、光で狙った時と空間でのみ、標的遺伝子の配列編集・発現制御を行う光活性化型Cas9の開発に取り組んだ。Cas9をN末端断片とC末端断片に分割し、それぞれに光感受性タンパク質pMagとnMagを連結した。このpMagとnMagも、青色光照射依存的に結合・解離する性質を持つ。暗所では、分割体は離れておりCas9としての活性を持たないが、青色光が照射されると、pMagとnMagが結合する事に伴い、Cas9断片同士が近接・再構成されCas9の活性が生じる。本システムが導入されたHEK293T細胞・HeLa細胞において、光依存的に効率よくゲノム編集を行える事が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
光で狙った時と空間でのみ、標的遺伝子の配列編集・発現制御を行う光活性化型Cas9の開発を完了し、当該研究成果について筆頭著者としてNature Biotechnology誌に論文を発表した。また、これを更に発展させた遺伝子発現制御システムの開発も進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本技術を発展させ、非常に効率よく内在性遺伝子発現の光誘導を行うシステムの開発を進めている。現在、新システムが既存の光誘導性内在性遺伝子発現制御システムと比較して、100倍程度強く内在性遺伝子を活性化する事を発見した。今後本システムを応用し、細胞の表現型を光で変化させられるかを検証する。
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Research Products
(3 results)