2015 Fiscal Year Annual Research Report
不斉有機触媒反応に基づく抗リンパ性フィラリア症活性天然物テルモライドBの合成研究
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15J05905
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
吉村 光 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | テルモライドB / β‐ICD / α‐ICPN / 触媒的不斉森田-Baylis-Hillman反応 / 立体制御合成 / [2+2]環化付加反応 / ポリプロピオナート |
Outline of Annual Research Achievements |
リンパ性フィラリア症は、糸状虫を原因として発症し、リンパ炎や象皮病を引き起こし、発展途上国において深刻な公衆衛生上の問題となっている。本研究は、リンパ性フィラリア症治療薬の創薬リードとして期待されるテルモライドBを研究対象として取り上げ、より優れた治療薬の開発を志向し、誘導体合成にも展開可能な合成ルートの確立を目的とする。今回、C11-C17連続不斉中心の構築の為の鍵反応として設定している当研究室で開発されたβ‐ICDとα‐ICPNを触媒とする不斉森田‐Baylis-Hillman(MBH)反応の詳細な検討を行った。当初はジアルデヒドに対するダブルMBH反応を計画していたが、ジアルデヒドの不安定性及びその後の非対称化の難易度を考慮し、段階的にMBH反応を行った。その結果、C11-C17部位の立体制御合成に成功した。なお、この際、使用する触媒を使い分けることによって生成物の立体化学を自由に制御できることも見出した。また、得られた結果を基にして、本方法論の一般性についても調べた。ベンズアルデヒドを基質としてMBH反応に続くエキソオレフィンのジアステレオ選択的水素化を繰り返し行った。基質による立体制御が優先すると考えられたが、幸運にもβ‐ICDとα‐ICPNの使い分けにより、生じる立体化学を制御できることが分かった。4連続不斉中心を有するポリプロピオナート構造の全8通りのジアステレオマーを立体選択的に構築できた。その後、シンコナアルカロイド触媒を用いた[2+2]環化付加反応等を経由してC10-C20フラグメントを合成した。さらに、MBH反応のジアステレオ選択性の向上の為に、触媒の修飾等を検討している過程で、β‐ICDの偽エナンチオマーとして機能する新規な触媒を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたジアルデヒドに対するダブルMBH反応による方法では、基質の安定性及びその後の非対称化に問題があったために段階的にMBH反応を行った。この方法により立体制御がより容易になり、また、非対称化の問題も解決することができた。その後、シンコナアルカロイド触媒を用いた[2+2]環化付加反応等を経て、テルモライドBのC10-C20フラグメントの立体制御合成に成功したことから、おおむね順調に進行しているといえる。また、本フラグメントは触媒を使い分けることによって、立体化学を完全に制御できるため、誘導体を合成する際にも柔軟に対応することができる。さらに、今回の検討においてMBH反応のジアステレオ選択性の向上の為に、触媒の修飾等を検討している過程で、β‐ICDの偽エナンチオマーとして機能する新規な触媒を見出した。また、本反応がポリプロピオナート構造の立体制御構築の強力な手段になりうることを見出した。古典的な方法論ではアルデヒドのα位にメチル基、β位に保護された水酸基を有する基質において、反応剤による立体制御は困難であった。当研究室で開発された触媒を用いるMBH反応ではそのような基質であっても、触媒を使い分けることによって生じる立体化学を制御できる。ポリプロピオナートは多くの天然物が有する構造単位であるため、今回の方法は様々な天然物の合成に活用できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、基質のコンホメーションや試薬による制御により、様々な立体中心を有するフラグメントを合成する。すなわち、アミド含有C1-C9フラグメントの合成は、既知化合物からアミノ酸単位との縮合反応を経由して合成する。既知化合物に含まれる2つの立体化学は反応試薬によって制御できるので、こちらも様々な立体中心を有するフラグメントを合成する。その後C10-C21フラグメントとアミド含有C1-C9フラグメントのカップリング反応を検討する。現段階では根岸カップリングに基づく収束的な合成ルートを計画しているが、満足のいく結果が得られない場合は、C1-C9フラグメントを細分化し、より段階的な炭素鎖の伸長を行うなど、柔軟に対応する。続いてカップリング体から保護基の脱保護、マクロラクトン化等を経てテルモライドBの触媒的不斉全合成を達成する予定である。なお、全合成達成後は天然物とは異なる不斉中心及びアミノ酸単位を有する各々のフラグメントを合成し、様々なテルモライドB誘導体を合成することも予定している。
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[Presentation] チランダリジジンの全合成2015
Author(s)
吉村光、高橋圭介、石原淳、畑山範
Organizer
第45回 複素環化学討論会
Place of Presentation
早稲田大学国際会議場(東京都新宿区)
Year and Date
2015-11-18 – 2015-11-20
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