2016 Fiscal Year Annual Research Report
N-メトキシ基を反応性制御素子として用いたアルカロイドの実践的合成法の開発と応用
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15J05926
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
寄立 麻琴 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 官能基選択性 / ブロック合成 / ラクタム / ステモナアルカロイド / ステモニン / サキソラムアミド |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、創薬化学を中心に、合成による供給が望まれる分子の構造は急激に複雑化している。多くの官能基を有する複雑な分子において、目的の官能基のみを選択的に変換することは容易ではなく、これを解決するために保護基が用いられてきた。しかし保護基を利用する場合、保護・脱保護による総収率の低下、及び廃棄物の増加による環境への負荷が問題となる。従って、複数の官能基が共存する中で目的の官能基のみを変換する「官能基許容性の高い反応」の開発が求められている。そこで私は、安定な官能基として知られるアミド基選択的な変換反応を鍵とした、ステモナアルカロイド類の統一的合成研究に取り組んだ。 ステモナアルカロイド類は鎮咳活性、抗結核菌活性、抗害虫活性などを有する重要なアルカロイド群である。構造上の特徴としては複数のヘテロ5員環と一つの含窒素7員環を有する点が挙げられる。最も基本的な骨格を有するステモアミドはγ-ラクタム、γ-ラクトンおよび含窒素7員環が縮環した三環性化合物である。また、ステモアミドのγ-ラクタムまたはγ-ラクトンに対してもう一つのγ-ラクトンが伸長した四環性化合物としてステモニンやサキソラムアミドなどが知られている。これら四環性化合物に対してさらにもう一つのγ-ラクトンが伸長した五環性化合物も存在する。 今年度、ステモアミドの合成法を大きく改良し、市販の原料より全7工程、17%にて合成を完了している。さらに、合成したステモアミドのγ-ラクタムおよびγ-ラクトンを完璧に区別化し、わずか2工程で直接的にγ-ラクトンを伸長する手法を開発した。これによりステモアミドを共通中間体としてステモニンおよびサキソラムアミドの全合成を達成している。またステモニンの過去の全合成例は全23工程であるのに対して、開発した合成手法では全9工程で全合成を達成している。サキソラムアミドについては、世界初の合成例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
28年度の研究計画では次の3点を大きな課題とした。(1)合成品の光学純度の向上、(2)ステモアミド合成におけるC9a位の立体選択性の向上、(3)ステモアミドに対する求核付加反応の立体選択性の向上。(1)に関しては、過去の93%eeから合成ルートを一新することで98%eeにて天然物を合成できた。(2)に関しては、シロキシピロールのビニロガスマイケル反応において、窒素原子の保護基を検討することで、1:1だったジアステレオマー比を2.7:1まで向上できた。さらなる向上のため、検討を続ける意向である。(3)に関してはステモアミドの立体構造を利用した戦略により大きな改善ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
標的化合物であるステモニン及びサキソラムアミドの全合成を達成し、立体選択性の向上にも成功した。以後は、共通中間体であるステモアミドのグラムスケールでの合成、およびより合成が難しい五環性天然物の全合成を目標として研究を進める。
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Research Products
(4 results)