2016 Fiscal Year Annual Research Report
海馬記憶神経回路においてニューロン新生が持つ調節機構の解明
Project/Area Number |
15J05936
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荒木 杏菜 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 神経可塑性 / 遠隔記憶 / 記憶想起 / 海馬 |
Outline of Annual Research Achievements |
A.記憶想起時活性化細胞群の定量 恐怖記憶条件付けによる記憶形成を施したダブルトランスジェニックマウス用い、記憶形成後に恐怖を与えた環境に曝露して恐怖記憶を想起させ、その際の海馬歯状回領域における活性化細胞群を蛍光タンパク質で長期標識した。それぞれのインターバルの後、マウスを同じ環境に暴露し恐怖記憶を遠隔記憶として想起させ、この時点での活性化細胞群を別の蛍光タンパク質発現で一過的に標識した。各時点における標識された細胞群の定量と局在比較をおこなった結果、遠隔記憶として二時点で想起された際、それぞれの海馬歯状回領域での記憶想起時活性化細胞群には、共通して活性化される細胞群が存在することが分かった。さらに、この再活性化細胞群の発生頻度は記憶獲得時点から想起時点までのインターバルにより変化することが分かった。これら再活性化細胞群の時間変化に伴う変化を明確にすることで、継時的に変化するとされる記憶想起時の海馬機能を明らかにすることができると考えられる。 B.標識細胞群の人為的活性化操作方法の確立 記憶想起時における海馬歯状回活性化細胞群の機能性について明らかにするため、想起時に活性化した細胞群に限局した活性操作方法の確立を進めた。今回の遺伝学的ツールの標識系と対応したウイルスベクター発現系を使用し、任意の時点での活性化細胞群に限局してチャネルロドプシンもしくはDREADDの異なる2種類の神経活動操作が可能な遺伝子を発現する系を作成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において重要な要素の一つである想起時活性化細胞群の継時的変化の解析結果より、海馬活性が遠隔記憶想起に寄与するという説に対して興味深い知見が得られた。また、想起時に活性化された細胞群に限定した細胞活性の人為的操作系の確立も予定通り進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の実験目標では、遺伝学的ツールを用いて獲得された記憶が遠隔記憶に至る時間での既存の回路に対する新生ニューロンの組み込みの観察を予定していたが、前年度に得られた結果を基に遠隔記憶時に再活性化する細胞群の機能性についての解析も進める。 現在二つの実験手法により、再活性化細胞群の機能性について検討している。 A.作成されたウイルスベクターを用い、想起時活性化細胞群に限定してチャネルロドプシンなどを発現させ細胞活性化の制御を人為的に行い、遠隔記憶想起の誘導が亢進されるかを確かめる。さらに開発中の別のウイルスベクター系を用いて、再活性化細胞群限定的にDREADDを発現させて活性抑制を行い、生理的条件下における想起での再活性化細胞群の機能について検討する。 B.再活性化細胞群が記憶想起に特別な意味を持つのであれば、同細胞群のネットワークへの接続、すなわちスパインの構造にも変化があると推測されるため、スパインの増減や構成を形態的に解析し、構造的観点から機能性を検討する。
|