2015 Fiscal Year Annual Research Report
ヘパトゾーンに対する免疫応答に関与する抗原蛋白の同定とワクチンへの応用
Project/Area Number |
15J05949
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
立野 守洋 山口大学, 連合獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ヘパトゾーン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究計画としては、ヘパトゾーンのSPF猫への実験感染および各発育ステージのヘパトゾーンの収集ならびに抗原蛋白となり得る候補蛋白の探索と同定を行う予定であった。ヘパトゾーンはそのオーシストを含むマダニを動物が経口的に摂取することで感染が成立するため、実験感染にはヘパトゾーン陽性のマダニが必要である。そこで、ヘパトゾーンのSPF猫への実験感染を行う前に、まずは実験感染に必要なヘパトゾーン陽性のマダニの採取を行った。日本産ヤマネコに寄生しているマダニからはヘパトゾーン由来遺伝子が頻繁に検出されており、日本産ヤマネコに寄生しているマダニをヘパトゾーン陽性のマダニとして採取した。イリオモテヤマネコおよびツシマヤマネコからそれぞれマダニを7匹と25匹採取した。次にヤマネコ由来のマダニが保有しているヘパトゾーンが実際に猫に感染可能なオーシストまでマダニ体内で成熟しているかの確認を行った。マダニを採取後、マダニ体内でヘパトゾーンがオーシストまで成熟するために要する時間を考慮し、全てのマダニ検体を14℃で採取後35日以上保存した。マダニを採取してから35日以上保存した後、マダニから血体腔液を採取し、マダニ体内でのヘパトゾーンのオーシストの確認を行うことを試みた。しかし、採取したマダニの多くは保存途中で死亡し、35日以上生存したマダニ検体はわずか7匹となった。死亡したマダニからは血体腔液を採取することが困難だったため、マダニをスライドガラスで押捺することで塗抹標本を作成し、顕微鏡的に観察したが、ヘパトゾーンのオーシストは観察されなかった。残りの生存しているマダニからは血体腔液を採取し、顕微鏡的に観察した。しかしながら、血体腔液中にはマダニ由来のプラズマトサイトは観察されたものの、ヘパトゾーンのオーシストは観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度の研究計画としては、まずヘパトゾーンのSPF猫への実験感染および各発育ステージのヘパトゾーンの収集を行う予定であり、ヤマネコに寄生しているマダニをSPF猫に経口的に投与することでヘパトゾーンの実験感染を行う予定であった。しかし、前述の研究実績の概要の項目に記載した通り、実験感染を行う前にマダニの血体腔液内のヘパトゾーンのオーシストの確認を行うことができなかった。そのため、採取したマダニ体内で実際にヘパトゾーンが猫に感染可能なオーシストの状態まで成熟しているかの検証が不十分であり、SPF猫へのヘパトゾーンの実験感染およびそれに続く研究計画を実施することができなかった。また、犬へのヘパトゾーンの実験感染に関する過去の報告では、実験的にヘパトゾーンを感染させたマダニ30匹を犬に経口摂取させることで実験感染を行っているが、今回採取したマダニの大部分は死亡したため、マダニの検体数に関しても実験感染を行うには十分ではない状況である。そのため、動物実験計画書は作成したものの、実験感染に必要な材料が準備できていない状況にあり、計画書を作成した当初の予定よりも進歩状況としては遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階の問題としては、マダニの血体腔内でのヘパトゾーンのオーシストの確認が行えていないこと、マダニの検体数が少ないことおよび保存中のマダニが死亡してしまうことが挙げられる。そのため、今後は日本産ヤマネコに寄生しているマダニの収集を継続的に行うとともにマダニ採取後の保存条件の検討を行い、保存中のマダニの生存率を向上させることを考えている。また、今回血体腔液の観察が行うことができたマダニ検体数が少ないため、今後はマダニの生存率を向上させることで検体数を増やし、血体腔液中のヘパトゾーンのオーシストの確認を行い、確認ができた場合には実験感染に進む予定である。 一方で、十分な数のマダニ検体が採取できない可能性やマダニの血体腔液からヘパトゾーンのオーシストが確認できない可能性を考慮し、他の原虫でワクチンの候補蛋白としての可能性が報告されている抗原蛋白に関して、ヘパトゾーンでも同様の蛋白の発現があるかを検討し、ヘパトゾーンワクチンの候補蛋白となり得るかの検討を並行して行う予定である。具体的には、まずヤマネコの血液材料およびヤマネコから採取したマダニからRNAを抽出し、ヘパトゾーン由来のRNAを得る。その後、他の原虫で報告されている抗原蛋白をコードする遺伝子の配列を参考にして、プライマーを設計後、ヘパトゾーンでも同様の遺伝子の発現があるかを検証する。遺伝子の発現が確認できた蛋白に関してをヘパトゾーンにおける抗原蛋白の候補とする。候補蛋白の組換え蛋白を作成後、電気泳動を行い、日本産ヤマネコを含めたヘパトゾーンPCR陽性ネコの血清を一次抗体として、ウエスタンブロッティング法を行い、顕微鏡的に寄生虫血症が認められない個体に特異的に検出されるバンドを抗原蛋白の候補とする。得られたバンドのアミノ酸配列をペプチドシークエンス法により決定し、解析を進める予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Molecular survey of arthropod-borne pathogens in ticks obtained from Japanese wildcats.2015
Author(s)
Tateno, M., Sunahara, A., Nakanishi, N., Izawa, M., Matsuo, T., Setoguchi, A., and Endo, Y
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Journal Title
Ticks and Tick-Borne Diseases
Volume: 6
Pages: 281-289
DOI