2015 Fiscal Year Annual Research Report
再生において元の形態を維持する細胞記憶の解明 DNAのメチル化に焦点を当てた解析
Project/Area Number |
15J05983
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高山 和也 広島大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 再生 / DNAメチル化 / dnmt |
Outline of Annual Research Achievements |
最初に“細胞記憶”による再生制御が確認できる時期の特定を行った。私たちの研究室で既に報告している、細胞増殖制御因子であるmTORC1活性化マーカーのリン酸化S6K(p-S6K)抗体を用いて、凍結切片での免疫組織染色により解析を行った。その結果、尾ビレ再生過程において細胞増殖活性マーカーPCNA陽性細胞が確認できない尾ビレ切断後3時間より既にProximal-Distalで発現細胞の割合に差が見られることが明らかとなった。この結果は、切断後直後より位置特異的な再生制御が機能していることを示唆しており、細胞自身が“細胞記憶”に従い再生を誘導していることが予想できる。 さらに詳細に解析するために、尾ビレ切断直後より発現が制御されていると予想される関連遺伝子(fgf20a, aldh1a2, atp6v1e1b等)の遺伝子発現変化を、リアルタイムPCR法を用いて確認した。その結果、遺伝子発現レベルにおいても切断後3時間よりfgf20a, aldh1a2, atp6v1e1bの3遺伝子で位置特異的な遺伝子発現を示すことが確認できた。その他様々な遺伝子においても同様に遺伝子発現の比較を行ったが、3遺伝子以外での位置特異的な遺伝子発現の変化は確認できなかった。以上の結果より、切断3時間以内で位置特異的な再生が誘導されていることが確認できた。 また、再生芽特異的に発現しているDNAメチル基転移酵素(Dnmt3aa)のノックアウト個体を、CRISPR/Cas9システムを用いて作製を試みた。その結果、dnmt3aaのノックアウト個体作製に高効率な有効な配列を得ることができ、3系統をF1世代まで維持することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに私は尾ビレ再生過程における元の形態を維持する細胞記憶の解明とDNAメチル化に焦点を当てた解析を行った。これらにおける解析は、当初の計画通りにそれぞれ免疫染色実験およびリアルタイムPCRを用いた遺伝子発現の解析を行うことにより、尾ビレ切断直後の切断後3時間目よりProximal-Distalで位置特異的な細胞増殖制御因子の活性および遺伝子発現の違いが確認できることを明らかにした。さらに、尾ビレ再生過程において再生芽特異的に発現しているdnmt3aaの変異体も、3系統の獲得に成功し、次世代を用いた尾ビレ再生過程の表現型を観察できる状態になっている。 位置特異的な遺伝子発現の差を示した遺伝子について、薬剤スクリーニングを用いて発現量に変化を示した遺伝子発現を抑制する因子の探索を行った。その結果、これまで再生過程における機能がほとんど報告されていない新たな因子を発見した。この因子に対する阻害剤処理した個体では、Proximal側で切断した尾ビレの表皮において異常な細胞増殖を示すことを明らかにした。さらに、新規因子活性領域特異的な抗体を用いた免疫組織染色の結果から、新規因子の活性化が表皮特異的に確認できることより、位置特異的な再生には表皮からのシグナルが重要であり、発見した因子を介した経路が位置特異的な再生を誘導している可能性が予想された。この結果を踏まえ、次年度は表皮に焦点を当てた位置特異的な再生制御機構の解析を行うことを計画している。 これより新規な位置特異的再生機構を明らかに出来ることが期待される事から、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
まず初めに位置特異的な遺伝子発現を示した3遺伝子(atp6v1e1b, activinβa, fibronectin1a )の発現制御領域(プロモーター・エンハンサー)のメチル化状態を、バイサルファイトシーケンス法により調べることを計画している。この実験より再生過程における位置特異的な遺伝子発現とDNAメチル化との相関関係を直接的に明らかにすることができると予想している。 さらにF1世代まで獲得しているdnmt3aa遺伝子の新規変異体を用い、尾ビレ再生過程での表現型の解析を行う。新規変異体を3系統のF1世代を獲得することに成功しており、今年度はF2世代を用い尾ビレ再生過程の観察および再生関連遺伝子の遺伝子発現変化をin situ hybridization法、リアルタイムPCR法を用い、Dnmt3aaと“細胞記憶”との関連を詳細に解析する。 また、前述した様に、薬剤スクリーニングの結果、これまで再生過程における詳細な機能が報告されていない新たな因子を発見したことから、この経路に関わる因子の詳細な解析を行うことを計画している。位置特異的な遺伝子発現を示した3遺伝子(atp6v1e1b, activinβa, fibronectin1a )の遺伝子発現、および新規因子の活性は表皮および表皮に近接する細胞特異的に確認できることから、表皮特異的な遺伝子発現誘導系の遺伝子組み換え個体の樹立を行うことで、さらなる解析を行うことができると予想している。そこで現在、表皮特異的プロモーターと新規因子のドミナントネガティブフォーム、さらに薬剤誘導型のTetONシステムを用いた組換え体の作製を行い詳細な解析を行うことを予定している。
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Research Products
(2 results)