2016 Fiscal Year Annual Research Report
現代インドのダリト解放運動:差別と公衆衛生をめぐるグローカル・ネットワーク
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15J06009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
増木 優衣 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | カースト間関係 / 水洗トイレ / 清掃人カースト |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究実施状況に関して、2016年4月・5月にポーランド、クロアチアにおける、ポストコロニアルおよび人類学のための国際会議において、ダリト差別と変容、そしてフィールドワークに関する口頭発表を行い、南アジア地域だけではない観点から問題を見るための知見を得た。 2016年6月には、リーディングプログラム(GSS)の一環で、中国・上海の復旦大学と共同で、学際ワークショップを開催し、インドにおける水洗トイレの普及と屎尿処理過程の変化の概要に関する口頭発表を行い、とりわけ歴史地理学的観点から調査地の詳細に関して記述・説明する技術を学ぶことが出来た。 2016年7月にはインド・ラージャスターン州においてNGOスラブが運営する職業訓練施設付近にて、ダリト差別と公衆衛生に関する短期フィールド調査を行った。調査内容は、過去数十年にわたる屎尿処理方法の変化に関して、清掃人カーストおよび農家にインタビューをすることであった。帰国後2016年9月には、南アジア学会パネルセッションにて、NGO活動が現代インドのカーストをめぐる社会関係にいかなる影響を与えているのかに関する口頭発表を行った。NGOが普及させる言説のもつ権力性や、研究を行う上での自らの位置づけ等に関する視点が抜け落ちていたことがフィードバックでは指摘され、今後の研究課題が浮き彫りとなった。 2016年11月には、研究科が企画する臨地プログラムの一環で、海外の研究機関と共同で研究成果発表を行うプロジェクトに参加し、インドネシア・マカッサルのハサヌディン大学において、ダリトの社会経済状況の変化に関して口頭発表を行った。2017年1月末~2月上旬にかけて、インドにおいてスラブ以外に水洗トイレ普及運動と清掃人カースト解放に携わってきた主なNGOを訪れ、トイレ技術開発過程と清掃人カースト支援に対する姿勢に関してインタビュー調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はインド・ラージャスターン州において、過去数十年にわたる屎尿処理方法の変化に関して、清掃人カーストおよび農家にインタビューを行い、ダリト差別と公衆衛生に関するフィールド調査を行った。 その調査は差別の社会的側面と、屎尿処理の衛生工学的側面をともに捉えようとする、分野横断的で文理融合的なものであり、高く評価できる。またその研究成果をポーランド、中国、インドネシア、クロアチア、日本(神戸)などで英語による発表を積極的に行い、様々な分野の研究者から建設的なフィードバックを得て、研究の基本的視座についてより深い検討を行い、広いオーディエンスに向けた発表の方法についても大きな進歩がみられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、まず、博士論文の各章の構成をきちんと整理し、博士論文を書き上げることを目的とする。同時進行で、『文化人類学』へ投稿する論文の作成も行う。フィールドワークにより得たデータの整理と、それについての議論を深めることを第一に考え、時間をかけた執筆を行うことを心掛けたい。
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Research Products
(5 results)