2016 Fiscal Year Annual Research Report
乳幼児における言語獲得と社会的認知発達の脳内基盤-近赤外線分光法による検討
Project/Area Number |
15J06053
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
白野 陽子 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 社会的相互作用 / 社会的信号 / 社会的認知 / 言語獲得 / fNIRS / temporoparietal junction / superior temporal sulcus |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は自然な社会的相互作用場面において、乳幼児がどのように社会的刺激を処理しているのかについて、視線の計測と近赤外分光法(fNIRS)による脳活動の計測を行うことで明らかにすることを目的としている。平成28年度は、以前に行った(1)共同注意場面における乳児の視線行動に関する研究と、他者との社会的な相互作用時における12ヶ月児の脳反応に関する研究(ロンドン大学バークベック校との共同研究)の結果に基づいた論文をそれぞれ学術誌に投稿した。(2)前年度に引き続き、社会的信号(アイコンタクトと随伴性反応)に対する乳児の脳反応に関する研究として、実験者が乳児と単純に目を合わせながら物を使って遊ぶ(Eye Contact)条件と乳児と目が合ったら実験者が直ぐに笑顔で反応する(Contingent)条件下での6~8ヶ月児と10~13ヶ月児の脳機能データを解析した結果、6~8ヶ月児においてContingent条件に対してのみ右の側頭頭頂接合部(TPJ)領域で活動の増加が認められた。このことから、少なくとも6~8ヶ月の乳児において、右のTPJ領域は随伴性反応という社会的信号の処理に関与していることが明らかとなった。また、自由遊び場面において母親の顔を見る回数の多い乳児は、少ない乳児に比べ、右のTPJ領域の活動が大きいことがわかっており、乳児においても他者の心的状態に対する敏感さとTPJ領域の活動には関連があることが示唆された。(3)笑顔というポジティブな意味をもつ随伴性反応に加え、ネガティブな随伴性反応(目をそらす)や社会的な意味を持たない随伴性反応(光る)に対する乳児の脳活動の計測にも新たに着手し、予備的なデータの解析結果では、やはりTPJ領域が随伴性反応に対して賦活することが明らかとなっており、随伴性反応の脳内機構が乳児においてもある程度発達していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに取得した、近赤外分光法(fNIRS)を使った社会的相互作用における脳機能データの解析を行った結果、社会的相互作用における随伴性反応の重要性が明らかとなり、また、6-8ヶ月児においてすでに側頭頭頂接合部(TPJ)の脳活動が随伴性反応の処理に関与していることが示された。この結果を受け、随伴性反応の構成要因の検討を目的とした新しい実験にも着手し、データも着実に収集されている。こうした脳内機構の発達過程や、脳活動と行動指標との関連についての検討も進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策として、(1)前年度に引き続き、社会的信号(おもに随伴性反応)に対する6-7ヶ月児の脳反応をfNIRS計測するとともに、(2)これまでに取得した脳機能データの解析結果を研究成果として発表していく予定である。また、(3)これまでの側頭葉反応の計測に加え、前頭葉反応の計測も行うことで、異なる脳領域間の機能的コネクティビティの解析に挑戦すると同時に、(4)より低月齢である4-5ヶ月児の脳反応の検討も行っていく予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Optical imaging of infant brain activation in response to social and non-social stimuli during real life interactions2016
Author(s)
Hakuno, Y., Pirazzoli, L., Blasi, A., Johnson, M. H., & Lloyd-Fox, S.
Organizer
The XX Biennial International Conference of Infant Studies
Place of Presentation
Hilton New Orleans Riverside (New Orleans, USA)
Year and Date
2016-05-28 – 2016-05-28
Int'l Joint Research
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