2015 Fiscal Year Annual Research Report
送粉者分類群間の採餌様式の違いと、それが植物の繁殖成功や群集構造へ与える影響
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15J06079
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
辻本 翔平 富山大学, 理工学教育部, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 選好性 / ハエ目 / 送粉 / 定花性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画の目的は、ポリネーター分類群の採餌様式が植物群落の成立に与える影響を明らかにすることである。その中でも本年度の研究では、これまであまり注視されてこなかった分類群であるハエ目ポリネーターの採餌様式に着目し、その一つである、花の色に対する好みを明らかにすべく、複数の着色した補虫トラップを使用して研究を行った。
研究の成果は、補虫された約13000個体のデータを解析したところ、①ポリネーターの大分類群(ハチ目、ハエ目、チョウ目、コウチュウ目、等)ごとに補虫されるトラップの色の比率が異なること、②ハエ目のポリネーターを形態を元に機能分類群(ハナアブ、オドリバエ、ツノキノコバエ、大型のイエバエ、小型のイエバエ、等)に分けて再度解析したところ、各機能分類群間でも補虫されるトラップの色の比率が異なること、③補虫される色の割合は、周囲に咲いている似た花の開花状況に左右されない事がわかった。この結果から、ハエ目のポリネーターも色に対する好みを持つ事が明らかになった。同時に、周囲の開花状況から影響を受けないという事は、この機能分類群が潜在的に保持している好みである可能性がうかがえた。
本年度の知見は、これまで大きく情報が欠如していた、主要なポリネーター分類群であるハエ目のポリネーターが、潜在的にも色に対する好みを持っている事を示した画期的な発見である。この色に対する好みは、ポリネーターの採餌様式の一つである定花性や、植物の花色の進化を左右する原動力を考える上で重要な知見であるため、本学問分野の深化に大きく貢献した意義深い成果であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は高山帯の天候が非常に悪く、晴天下で長期間の研究を行う事はかなわなかった。特にハエ目ポリネーターは日照量、気温の変化に敏感で、本年度のハエ目ポリネーターの採餌は一瞬の晴れ間に一斉に採餌していた。そのため当初予定していた研究計画である、ポリネーターの行動追跡による選好性の検討は、ある程度長い時間連続して観察する事が出来る事、広い範囲で観察しなければ比較することができない事、等の前提がそろわなかったため、行う事が出来なかった。しかし、急遽新たな調査方法を編み出し、ハエ目ポリネーターを含めた分類群の選好性を図る事が出来たとともに、その選好性が先天的なものである可能性を示す事が出来た事など、研究課題の達成に大きく近づいたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度もポリネーターの選好性をベースにした研究を行う。当初の研究計画にあった、実験者がインタビュースティック持って採餌中のポリネーター人提示する調査は、ハチ目ポリネーターには有効であったが、ハエ目ポリネーターはその警戒心の強さゆえに成功率が非常に低かった。その為来年度は、実験者が近づいて観察する事の問題点を解決するため、実験系を構築し、実験者が離れて行動を観察する事が出来る実験系を構築することで、分類群間の採餌様式の違いが植物群落やその形質の進化に与える影響を解明すべく研究を行う。
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