2015 Fiscal Year Annual Research Report
ロケットエンジン燃焼室の極限環境下における反応性熱流体現象の解明に関する研究
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15J06200
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榊 和樹 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ロケットエンジン / 燃焼 / ピントル型噴射器 / エタノール / 液体酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度において試作,試験を行った平面ピントル型噴射器を用いてエタノール/液体酸素ロケットエンジン燃焼室の燃焼実験を行い,各種条件下における光学計測を実施した.試験の結果,Fuel-centered方式においてはO/Fの増加に比例してC*効率が増加したが,oxidizer-centered方式においては逆の傾向が得られた.この結果から,ピントル型噴射器においては推進剤噴射形態を変更することで噴射された推進剤噴流の衝突時の運動量比が変化し,燃焼特性に影響を与えることが明らかとなった.また光学計測の結果、推進剤液滴の壁面への衝突によりC*効率が悪化している可能性が高いと考えられる結果を得た.その後、O/Fと推進剤噴射形態を固定した条件下において推進剤運動量比のみを変化させた実験を行った.試験の結果からoxidizer-centered方式においては推進剤運動量比を変化させることでC*効率も変化したが,fuel-centered方式においてはC*効率の変化は見られなかった.これはoxidizer-centered方式においては,推進剤運動量比が減少するに伴い,C*効率が向上したが,fuel-centered方式においては,推進剤運動量比の燃焼特性に及ぼす影響は小さかったものと考えられる. また実機形状に近い燃焼器を用いた燃焼試験を行った.2015年8月までに実施した燃焼試験結果から,ピントル型噴射器においては推進剤運動量比の増加に伴いC*効率が低下する可能性が示唆されていたが,実機形状に近い燃焼器においてはその傾向はほぼ見られず,逆に運動量比が低い条件下においてC*効率が大きく減少する傾向が確認された.これは燃焼室の幾何形状が燃焼特性に大きな影響を及ぼすことを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記課題に関して、平成27年度においては期待以上の研究成果を得た。特にピントル型噴射器において、Fuel-centered方式とOxidizer-centered方式における特性排気速度効率のO/F依存性を明らかにし、本噴射器においては推進剤総運動量比(TMR)が特性排気速度効率に大きな影響を及ぼすことを実験的に明らかにした。また、各種噴射条件における噴射器近傍の光学計測に成功し、特定の条件においては推進剤噴霧の過大なペネトレーションにより、燃焼室壁面へと噴霧が衝突し、推進剤の蒸発および反応が抑制され、その結果特性排気速度効率が他の条件と比較して悪化することを明らかにした。さらに、より実機に近い形状を持つ燃焼器による燃焼試験を行った結果、光学計測用に設計された矩形燃焼器とは異なる傾向が得られた。これは燃焼器の幾何学的形状が燃焼特性に大きな影響を与えていることを示唆しており、実機形状の燃焼器の燃焼特性を矩形燃焼器で模擬するためには、2次元化した矩形燃焼器における各種噴射条件や燃焼室形状に大きな変更を加える必要があることが明らかとなった。当該年度において、矩形燃焼器と実機形状の燃焼器の燃焼特性を比較し、現状の実験系の改善方針が明らかとなった点は期待以上の成果である。また実験と並行して、二液式ロケットエンジンの燃焼室内の流動場を解析可能な数値シミュレーション用のプログラムの作成を終了し、複数の条件で計算結果を得ている。二液式ロケットエンジンに特有の、燃料及び酸化剤の二種類の噴霧を取り扱う数値計算プログラムを作成し、実験と数値解析結果を比較可能な状況となった。さらに、解析に必要な燃料の簡略化反応モデルを構築し、炭化水素系燃料の反応性熱流動現象を比較的短時間で計算可能な環境を整えた、各種燃料の簡略化反応モデルを作成し、精度を検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究結果から、光学計測用に設計された矩形燃焼器と実機形状に近い軸対称形状の燃焼器においては燃焼特性が異なることが明らかとなった。従って、実機における燃焼特性をより正確に模擬しつつ光学計測を可能とする系を構築することが必要である。特に、実機形状における半径方向への幾何学的な広がりの効果を矩形燃焼器に含むことが必要である。さらに、矩形および軸対称形状におけるピントル型噴射器の微粒化特性を明らかにし、双方の差異を明確にし、軸対称形状における微粒化特性を矩形の系で可能な限り模擬する方策を検討する。さらに現状の矩形の系では、推進剤噴射器の構造から完全に2次元的な系とはなっておらず、3次元性が現象に表れている可能性が高い。特に2次元の数値計算の結果から、反応帯の位置等に関して3次元性が表れていることが示唆されているため、噴射器および燃焼器の形状を修正し、可能な限り3次元的な効果を抑制できる系による光学計測を再度行う。さらに、前年度までの実験条件は、実機作動条件と比較して低圧環境による試験が中心であった。従って、より実機の作動条件に近い条件での燃焼挙動を明らかにするために、より高圧な環境における試験を実施する。さらに、前年度の試験の結果から、ピントル型噴射器においては特性排気速度効率と音響振動の間に相関関係があることが示唆されている。従って、次年度は音響振動下における火炎の光学計測を実施し、音響振動が燃焼特性に及ぼす影響を明らかにすることを試みるとともに、振動を抑制しつつ特性排気速度効率を改善するための条件を探る。
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Research Products
(7 results)