2015 Fiscal Year Annual Research Report
キノロン系抗菌薬耐性獲得に伴うDNAジャイレースの活性低下とその補完機構の解明
Project/Area Number |
15J06295
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山口 智之 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | らい菌 / DNAジャイレース / 酵素活性 / アミノ酸置換 / キノロン系抗菌薬耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、らい菌にキノロン系抗菌薬に対する耐性をもたらす酵素内アミノ酸置換によってキノロン耐性の獲得と同時に引き起こされるDNAジャイレースの活性低下の特徴、およびその耐性を失うことなく酵素活性を補完する機構を明らかにすることである。 キノロン耐性を与えるアミノ酸置換を導入したらい菌DNAジャイレースによるDNAの超らせん化を観察することで、野生型及び変異型の酵素活性について比較検討を行った。試験の結果、キノロン耐性臨床株の大部分で確認される91位のアミノ酸置換を導入したDNAジャイレースの超らせん化活性は変異型間で最も高く、一方89位のアミノ酸置換を持つDNAジャイレースでは超らせん化活性が最も低いことが示された。また95位のアミノ酸置換を導入したDNAジャイレースでは、他の変異型DNAジャイレースに起こるものと異なる変化がDNAの超らせん化の過程で観察された。この95位のアミノ酸置換による独特な変化の詳細を考察するにあたり、DNAジャイレースによるDNA超らせん化を単純化したモデルを考案し、これのコンピュータプログラムを開発した。このプログラムの実行により、超らせん化の際にDNAジャイレースがDNAから離れず同じDNAを続けて超らせん化した場合に上述の95位のアミノ酸置換を持つDNAジャイレースによる超らせん化の観察結果に似た挙動を示すことが判明した。このことから95位のアミノ酸置換がDNA-DNAジャイレース間の結合の強さに変化を与えることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は酵素活性を補完する機構の発見には至らなかったが、キノロン系抗菌薬に対する耐性をもたらす酵素内アミノ酸置換がDNAジャイレースの活性自体に及ぼす影響のより詳細な解析結果を得ることができた。この結果はらい菌のDNAジャイレースに対しどのような補完が起こり得るかを考察するにあたっての重要な手がかりとなると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シークエンサーによる解析に先立ち条件検討を行ったところ、当初の予想に反し解析に必要な全長が保存された変異型らい菌のDNAを確保できないことが判明した。代替策として、近縁菌種の変異株を用いての解析を計画した。この変異株の作出にあたり、その菌種のDNAジャイレースの酵素活性・キノロン耐性について予め調べる必要があるため、使用する近縁菌種の選定とそのDNAジャイレースの精製から研究を進展させる予定である。
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Research Products
(1 results)