2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J06296
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田中 亨 早稲田大学, 先進理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 量子情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、複数の量子状態の重ね合わせ状態が保持する重ね合わせの程度(量子力学的干渉性)の定量化を通して、量子状態の重ね合わせの原理に起因する量子情報処理の利点を明らかにすることである。特に、量子系の物理量としてハミルトニアンに注目し、エネルギー固有状態の重ね合わせ状態の量子情報処理における潜在的利用価値の解明を目指して研究を進めた。 まず、エネルギー固有状態の重ね合わせ状態が保持する重ね合わせの程度を定量化するために、インコヒーレント操作という量子操作を用いた異なる量子状態の変換問題を考察した。そして、同一の純粋状態に初期化された多数の量子系が利用可能であるという条件下で、インコヒーレント操作による状態変換レートを導出することに成功した。本研究結果により、エネルギー固有状態の重ね合わせ状態の保持する重ね合わせの程度が定量化できたことになる。 次に、エネルギー固有状態の重ね合わせ状態が量子情報処理におけるリソースと見なし得るか否かを明らかにするために、エネルギー固有状態の重ね合わせ状態とインコヒーレント操作を用いることでユニバーサルな量子計算が実行可能か否かを考察した。そして、エネルギー固有状態の重ね合わせ状態の保持する重ね合わせの程度と実装可能となる量子計算アルゴリズムとの定量的な関係を導出することに成功した。本研究結果により、エネルギー固有状態の重ね合わせ状態は量子計算を可能にするリソースであると結論できる。 また、量子力学的干渉性が重要な役割を演じる量子状態の非対称性あるいは非平衡性の定量化理論では、量子状態の潜在的利用価値はその状態の下でのエネルギー分布とエントロピー関数によって特徴付けられる。そこで、これらの推定問題を考えた。そして、物理的に自然な仮定の下で、測定により生じる擾乱を抑制しつつエネルギー分布とエントロピー関数の推定が可能であることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子操作と量子力学的干渉性の関係に関しては、交付申請書に記載した研究計画から若干遅れている。しかし、量子状態の保持する重ね合わせの程度の定量化に関しては、交付申請書に記載した研究計画通りに研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的の一つである(混合状態を含む)一般の量子状態の保持する重ね合わせの程度の定量化問題に対して、他の研究者によって画期的な進展がもたらされた。また現在、量子力学的干渉性を定量化するという観点からの量子操作の分類が進み、インコヒーレント操作以外の量子操作のサブクラスが多数提案されている。そこで本年度は、各サブクラスの量子操作を用いた位相推定アルゴリズム等の重要な量子情報処理の実装可能性や各サブクラスへの操作的意味付け可能性に関して研究を進める。
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Research Products
(3 results)