2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J06305
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
嶌田 知帆 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 森林再生 / 自然配植 / 光環境 / 種多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
生態系や景観の保全,防災などの目的で自然度の高い森林を再生することが求められている中,本研究は通称自然配植手法と呼ばれる森林再生技術が自然度の高い森林を再生するかを検証するものである。本研究における自然度の高い森林とは,空間的にも経時的にも多様な光環境の中で多種多様な植物によって構成されている森林と位置づけている。 研究対象地は約20年前,当時裸地だった法面に自然配植手法と従来型の手法の一つである播種工がそれぞれ導入され,現在,前者は様々な高さの樹木で構成される複層林が,後者は一種類の樹種が優占する一斉林が形成されている法面である。 両法面の光環境や種組成の違い,さらには両法面で違いが生じた理由を検証するために,当該年度は研究対象地に10 m×10 mのプロットを計9つ設置し,その内部において毎木調査(プロット内の高さ0.5 m以上のすべての木本植物を対象に,樹高・胸高直径・樹木位置を記録)・光環境調査(①プロットを5×5 mの小プロットに分割し,各小プロットの中点において,高さ0 mから10 mの1 mごとに光量子束密度計を用いて光環境を計測。②各法面の任意の点において,光量子束密度計を使用して3日間連続で光環境の変動を記録)・林床調査(5×5 mの小プロットをさらに2.5×2.5 mに分割し,高さ1.8 m以下の植物に対して次項を記録。①木本植物:稚樹の種ごとの最大高・個体数・被覆度。②草本植物:種ごとの最大高・被覆度。)を実施した。さらに,地上型レーザスキャナを使用して研究対象地の範囲内の点群データを取得した。 上記の調査から得られたデータを解析し,種組成・森林構造・光環境の相互関係を解明することで,冒頭に述べたように森林再生に対して様々なニーズがある中で,多様なニーズに応えうる森林再生技術の確立に寄与できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に予定していたすべての野外調査とデータ解析を遂行することができたため。具体的には,種組成・森林構造・光環境の関係を検証するための大きく分けて4種類のデータ(①毎木調査データ②光環境データ③林床植生データ②地上型レーザスキャナから取得した点群データ)を取得することができた。このデータを解析し,得られた成果をもとに当該年度中に国内学会での発表と論文の投稿を実施した。また,次年度に開催される国際学会への発表が決定している。
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Strategy for Future Research Activity |
「9. 研究実績の概要」で記載した調査で取得したデータを使用して,今後は次の事柄を実施する。①複層林と一斉林との間で種組成・森林構造・光環境はどう違うのかを解析。②違うのであればその理由を検証。③点群データを使用した森林構造の再現性や光環境の推測の可否を検証。ここから得られた成果を論文及び国際学会(発表決定済み)で発表する。また,今後は調査対象木の樹木位置を取得するための測量を実施し,測量データを森林構造の解析や光環境と樹木位置の関係性の解析の際に使用する。 本研究では上記までの研究の他に5種類の試験区を設置した比較研究も実施している。今後の推進方策として,試験区内のモニタリング調査を行う。モニタリングの調査項目としては,樹高や当年の生長の他に苗木の樹勢判定を行う。また,植栽した苗木以外の植物の定着も記録する。得られたモニタリングデータから苗木の活着率,生長率及び植物の定着の有無を試験区ごとに求め,施工方法の違いによる森林再生の3年間の過程を比較し,各施工方法の有用性について検証する。
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Research Products
(2 results)