2015 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡環境効果の動力学的取り扱いとKramers化学反応論の拡張
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15J06317
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
松尾 泰幸 三重大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 変分原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、環境の温度が揺らぐ環境下での化学反応速度を導出し、環境と部分系という異なるタイムスケールのダイナミクスが結合した運動論の発展に寄与することである。 研究計画としては以下のようなものであった。環境の温度が揺らぐ効果を考慮するために非線形摩擦項を導入する。この非線形項は報告者の前段的な研究で示唆されたものである。そしてKramersの化学反応論を非線形摩擦項の場合に拡張する、というものである。反応速度を導出するためには偏微分方程式を解く必要があるが、摩擦が非線形な場合には方程式を厳密に解くことが困難である。そこで報告者の受入研究員である阿部が開発したFokker-Planck方程式に対する変分法を適用し、化学反応速度を導出する計画であった。 得られた結果は主に二つである。一つは変分解を用いて非線形摩擦項の場合の化学反応速度を計算したこと。この反応速度は環境の揺らぎが0の極限でKramarsの解に一致する。もう一つは環境の温度が揺らぐ効果により反応速度が向上する可能性があることを示したことである。しかし、ここで用いた変分解は、変分解を得るための仮定により未定のパラメータを含む。このパラメータを解析的に決定することや、変分解の精度を見積もることが出来なかった。その理由は主に、ここで用いた変分法が発展途上であり研究例も少なく、この問題に対する方針をたてられなかったからであった。このような事情で論文を出版することは出来なかった。そこで、得られた結果と課題について物理学会での報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上述のように、当初の計画に即して化学反応速度を導出した。しかし、変分法を適用する際に未定のパラメータを導入する必要があり、このパラメータを決定することが出来ていない。この状態で研究が停滞している。
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Strategy for Future Research Activity |
変分解のパラメータを解析的に決定する問題が進展しない状態で研究が停滞しているため、解析的な議論は保留にし、数値解析によるアプローチを行う計画である。これにより変分解が妥当かどうか判定できると考えている。 また、27年度の研究の反省として研究計画に固執しすぎたことが挙げられる。この反省から、本年度の研究では受入研究者との議論を行うことなどにより、多様で柔軟な視点での研究を行いたい。
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Research Products
(1 results)