2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J06343
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
飯倉 江里衣 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 満洲国軍 / 朝鮮人 / 植民地支配 / 中央陸軍訓練処 / 陸軍軍官学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.前年度に執筆し、学会誌へ投稿を行った論稿「朝鮮人の満洲国軍・中央陸軍訓練処への入校」を査読審査後に修正・提出し、これが学会誌に掲載された(『日本植民地研究』第27号、2015年6月)。本稿は、「満洲国」における朝鮮人と軍隊の関係を、満洲国軍の将校養成機関・中央陸軍訓練処(1932年に奉天に設立)への朝鮮人の入校過程とその背景から論じ、主に日中戦争期に至るまでの関東軍による朝鮮人支配のあり方を軍事的側面から実証的に明らかにしたことに大きな意義がある。
2.2016年2月に「満洲国軍・陸軍軍官学校と朝鮮人―口述資料を通してみる教育経験」を『朝鮮史研究会論文集』第54集に投稿した(現在査読審査中)。本稿は1939年に「満洲国」の新京郊外に設立された満洲国軍の将校養成機関、陸軍軍官学校(以下、軍校)へ入校した朝鮮人に注目し、軍校受験の背景や採用のされ方、教育経験についての当事者による口述資料を文献資料と相互参照しながら論じることで、これまでほとんど知られてこなかった彼らの軍校入校前後の具体的諸相を描き出したことが重要であった。
以上の2本の論稿の成果により、「研究の目的」の第一として掲げた、「満洲国軍出身の朝鮮人(韓国人)が、植民地期に何を経験し、また、その経験にはいかなる日本の朝鮮植民地支配および「満洲国」支配の構造的背景があったかを、彼らの満洲国軍への参入過程を追うことで明らかにする」という点を解明することができたと思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.「研究実績の概要」2で述べた論稿執筆のために、韓国でインタビュー調査を実施したが、これまで二度アプローチを試みるも断られ続けていた方へのインタビュー調査が実現したことは大きな成果であった。前年度まで韓国ソウルで行ってきた満洲国軍出身者へのインタビュー調査は、満洲国軍・陸軍軍官学校の第1期生と第7期生の2名を対象に実施したものであったが、以前インタビューに応じてくれた第7期生の協力を得て、同校第6期生へのインタビュー調査を行うことができた。結果的に第7期生と第6期生2名へのグループインタビューという形になったが、その際に第7期生からも前年度までの単独インタビューでは得ることのできなかった貴重な証言を得ることができ、大変有意義な調査となった。この時、第6期生からは陸軍軍官学校時代の朝鮮人生徒と共に撮影した写真や、植民地解放直後に朝鮮半島南部で結成された建国準備委員会傘下の治安隊解散式(本人も参加)の写真など、貴重な資料の提供を受けた。
2.資料調査に関しては、中国吉林省延辺朝鮮族自治州の延吉において、「満洲国」期の朝鮮人集団部落政策によって集団部落に暮らすことになった300名もの朝鮮人の体験を証言集としてまとめたものの一部(金チュンソン編『中国朝鮮族史料全集 歴史篇 移住史11巻』延辺人民出版社、2012年所収)を入手することができた。このインタビューの調査者にも龍井で直接会い、インタビュー時の状況などについて詳しく話を聞くことができた。
3.そのほかの国内外における調査でも様々な成果を得ることができたが、当初の計画を変更して中国などでの調査に重点を置いた都合上、韓国での史料調査は今年度中には十分に行うことができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、アメリカの国立公文書館(NARA)や韓国の国会図書館、国立中央図書館、国史編纂委員会での史料調査・収集を中心的に行う計画である。 「研究の目的」の第二で掲げたように、朝鮮の植民地解放後に大韓民国の国軍に加わり、「麗順事件」(1948年10月)の処理過程において民間人虐殺を行った満洲国軍出身者について、彼らの植民地期の経験の連続性と彼らを支持し虐殺を黙認した駐韓米軍の意図という2つの観点から研究を進める。
|
Research Products
(3 results)