2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J06346
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松葉 類 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 正義論 / レヴィナス / ユダヤ / 他者論 / 倫理学 / 政治哲学 / 民主主義 / 第三者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「レヴィナス正義論の広がりを検討する」という当初の目論見どおり、レヴィナスの正議論を以下の三点について検討した。 1.レヴィナスにおいて「第三者」という語の内実を「眼差しの中の第三者」と「隣人の隣人」との二つに区別することができた。前者は特権的な位置づけを持つ「他者」が「第三者」と共有する「社会的秩序」の中に現れるという、他者関係の様相性の問題であり、後者はレヴィナスのいう「他者」が別の「他者」との関係によっていわば変質してしまうという、政治的対立の問題である。 2.1.で述べた「隣人の隣人」の問題について、レヴィナス自身が自覚的であり、その萌芽はすでに前期から見られるということが確かめられた。このことは、彼への主要な批判に対する反批判ともなりうるであろう。 3.本研究は、レヴィナスが後期においてこの問題を「民主主義」という概念を用いて論じたことを明らかにし、その中で彼がこの語に二つの意味、すなわちユートピア的な民主主義と現実的な民主主義という二つの意味を与えていたということが確かめられた。これまでの研究においては、前者のみをとりあげる議論しかなされてこなかったものの、本研究は後者、民主主義の現実的な側面をも論じることでレヴィナスの法哲学としての読み直しに資する内容を指摘しようとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、レヴィナスの正義論の諸論点を、おもにレヴィナスの後期著作から抽出することを課題とした。そのために、彼のいわゆるユダヤ的テクストを含めた一次文献と、国内外の二次文献の収集・整理を行った。その中で当初予想していた論点と、それに連なるテーマについての研究を深めることができた。こうした研究内容については口頭発表・論文にて公にした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は二年次において、初年次の成果を踏まえてさらにレヴィナスの正義論を整理してゆく。初年次の研究により、レヴィナスの正義を論じるためには、彼のユートピア論を調査しなければならないということが明らかとなった。そこで今後は彼のマルセル、ローゼンツヴァイク、ブロッホ理解を、それぞれの一次文献におけるユートピア論読解を通して明らかにしていく。
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Research Products
(5 results)