2015 Fiscal Year Annual Research Report
新規PDI酸化酵素GPx7/8を起点としたジスルフィド結合形成経路の分子構造基盤
Project/Area Number |
15J06349
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金村 進吾 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 小胞体 / ジスルフィド結合 / 酸化還元 / Ero1 / PDI / GPx7/8 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規PDI酸化酵素GPx7/8によるPDIファミリータンパク質及び酸化酵素の分子認識機構の解明を目指した。我々は、SDS-PAGE、質量分析などの解析により、Ero1がPDIを酸化する過程においてCys208-Cys241ジスルフィド結合が還元されることを発見した。そこで、Cys208/Cys241ともにSerに置換したEro1変異体のPDIに対する酸化活性を測定したところ、野生型のEro1よりも高いPDI酸化活性を示し、また産出する過酸化水素量が大きく増大することが判明した。実際、このEro1変異体を過剰発現させた細胞は、小胞体内で過剰の過酸化水素を産出するため、増殖速度、生存率共に大きく減少した。分子動力学シミュレーションでは、この開裂により酸素分子のFADへのアクセスが促進されることが示唆された。つまり、Cys208-Cys241ジスルフィドの開裂による酸素分子の流入経路の形成・拡大がEro1の活性亢進の鍵となっていることを突き止めた。さらに、蛍光タンパク質を用いたBiFC法によってEro1とGPx8間の相互作用を確認した。(Free Radic. Biol. Med., 2015)。しかしながら、還元剤存在下では、Ser変異体は最大活性を示さず、むしろ野生型の方が高活性であることがわかった。これらの結果から、還元剤存在下でのEro1の最大活性にはCys208とCys241が必要であり、Ero1-PDIの複合体を介した触媒サイクルが重要であると考察している(Redox Biology, 2016)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の成果としてEro1の新規活性化機構及びEro1とGPx8との相互作用を明らかにし、Free Radic. Biol. Med., Redox Biol.の2誌に採択された。哺乳動物細胞の小胞体における分泌タンパク質や膜タンパク質の立体構造形成に必要なジスルフィド結合ネットワークの起点となるEro1の新規活性化機構及びEro1とそのジスルフィド結合導入反応の副産物である過酸化水素の消去酵素GPx8の相互作用を明らかにし、小胞体内酸化還元環境の恒常性維持に関する研究分野に貢献した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、GPx7/8によるPDIファミリータンパク質及び酸化酵素の詳細な分子認識機構を明らかにするため、分光、熱力学的手法を用いて相互作用を調べ、X線結晶構造解析、X線小角散乱、NMRなどによって相互作用部位を同定する。他、申請書通り研究を行う予定である。
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Research Products
(7 results)