2016 Fiscal Year Annual Research Report
実験室進化実験による3-ヒドロキシプロピオン酸高生産大腸菌の合理的育種
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15J06350
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
徳山 健斗 大阪大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 物質生産 / ゲノムスケールモデル / 進化工学 / ゲノム変異解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物の代謝を利用した生産プロセスは、環境への負荷が少なく持続的な生産を可能とするプロセスとして期待されている。代謝による物質生産を高度化するには、代謝全体を目的物質生産に適した状態へと改変する必要がある。生物は、元来置かれた環境に適応し、細胞内の代謝状態を自然に最適化するという性質を有しており、この特徴を代謝改変に利用できないかと考えた。実験室進化実験は、同一培養環境下で継代培養することで増殖速度が向上するよう株を育種する手法である。細胞が増殖すればするほど目的物質を生産する増殖連動型の生産株に実験室進化実験を行えば、生産性向上が期待できる。本研究では、計算機上で再構築されたゲノムスケールの代謝反応モデルを用いて増殖連動型の有用物質生産大腸菌を構築し、さらに実験室進化実験により適応進化させることで高生産株育種を目指す。さらに生産株のオミクス解析を行い、生産性向上に寄与した代謝変動を解明する。 本年度は、前年度に取得したコハク酸を高生産する進化株について、酸素条件を制御した連続発酵系で培養を行い、コハク酸生産性を評価するとともに、代謝反応モデルによる予測結果と比較を行った。その結果として、微好気条件下でのコハク酸収率はグリセロールを基質とした連続発酵系で世界最高収率となる 0.44 g/gを達成し、進化株は代謝反応モデルにより予測された細胞増殖が最大かつコハク酸生産性の高い代謝状態へと遷移したことが明らかになった。これらの結果から、代謝反応モデルと適応進化を統合した新規な物質生産細胞工場の創製法の開発に成功した。 また、取得した全ての進化株に対し、次世代シーケンサーを用いたゲノム変異解析とゲノム編集により、高コハク酸生産に寄与した遺伝子変異の同定を試みた。ppc遺伝子上に同定された新規のミスセンス変異によりコハク酸生産が向上する事が実験的に明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度まで、計画通り、ゲノムスケール代謝反応モデルに基づいた増殖連動型の目的物質生産株を設計と継代培養実験による実験室進化実験を行い、ねらいどおりのコハク酸高生産株の育種に成功した。さらに、コハク酸高生産に寄与した新規遺伝子変異の同定に成功し、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、進化株におけるコハク酸高生産機構の解明を試みる。タンパク質の構造モデルを用いた解析により、ppc遺伝子のコードしているホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼに生じた変異は、拮抗阻害物質であるアスパラギン酸の結合部位付近に位置し、アロステリック阻害を軽減した可能性が考えられる。そこで、変異型Ppcの酵素活性測定を行い、アスパラギン酸による阻害について評価を行う。
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Research Products
(6 results)