2015 Fiscal Year Annual Research Report
全空間シミュレーションによる極超音速ソニックブームの伝播特性解明
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15J06433
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 礼 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ソニックブーム / 数値流体力学 / 極超音速 / 分子振動緩和 / 衝撃波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高高空で発生した衝撃波を地上までCFD解析する手法(全空間シミュレーション法)に分子振動緩和効果を組み込むことで、ソニックブームの立ち上がり時間の予測を可能にし、極超音速飛行体から発生したソニックブームの伝播特性を解明することである。本年度は、以下の2点に取り組んだ。 1、並進-振動エネルギー緩和を考慮した全空間シミュレーション法の構築 全空間シミュレーション法に酸素と窒素の並進-振動エネルギー交換反応を組み込み、JAXAが行ったD-SEND#1の飛行試験を模擬した。その結果、圧力波形の形状が飛行試験データとよく一致したことから、本手法の有効性を確認した。 2、一様大気及び層状大気中における波形の遷移メカニズムの調査 1、で構築した手法を適用し、軸対称回転体まわりの流れ場を対象に、超音速から極超音速までの複数のマッハ数、複数の一様大気条件で軸対称解析を行った。その結果、極超音速の場合、超音速の場合よりも波形の平滑化は遅くなるが、遷移過程はマッハ数に依存せず、主に緩和時間に依存していることが分かった。具体的には、緩和時間が長い場合、衝撃波後方の広い範囲で緩和効果が作用し、立ち上がり時間は形成されないが、緩和時間が適度に短い場合、衝撃波直後で強い緩和効果が作用し、立ち上がり時間が形成されることを明らかにした。また、高高度では酸素による緩和効果が支配的であるが、低高度では窒素の緩和効果も無視できなくなることが分かった。 次に、上記の一様大気条件を層状大気条件に変更し、3次元解析を実施した。その結果、地上にかけて緩和時間が短くなるため、高高度では緩和効果により波形は平滑化するが、低高度では平滑化した波形が再度急峻化するため、立ち上がり時間も増減することが分かった。また、極超音速の場合波形の平滑化が遅く、超音速の場合よりも低い高度まで波形が平滑化することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、全空間シミュレーション法に並進-振動エネルギー交換反応を組み込むことで、実際の飛行試験が再現できることを確認した。また、一様大気及び層状大気中での並進-振動エネルギー交換反応による波形の遷移メカニズムを明らかにし、極超音速の場合波形の平滑化が遅くなることも確認できた。以上から、本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は酸素と窒素の並進-振動エネルギー交換反応が波形に及ぼす影響を調査したため、来年度は振動-振動エネルギー交換反応が波形に及ぼす影響を調査する予定である。また、細長い軸対称回転体まわりの流れ場を対象に解析を実施してきたため、今後は離脱衝撃波が発生するような鈍頭物体に対しても解析を実施する予定である。
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Research Products
(4 results)