2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J06574
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江間 陽平 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 初期宇宙 / 高エネルギー宇宙線 / インフレーション / 重力 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に、IceCube の結果を受けた高エネルギーニュートリノの起源に関する研究及び、インフレーション後の inflaton 振動期中の宇宙のダイナミクスについて研究を行った。以下にその詳細を記述する。 IceCube が近年高エネルギーニュートリノ宇宙線を観測した。筆者は昨年度までの研究で長寿命粒子の崩壊によってこれが説明できることを示したが、この長寿命粒子を含む素粒子模型を具体的に構築した。特に、IceCube の観測結果を説明するには、長寿命粒子の残存量は非常に少ないことが期待される。いかにしてその非常に少ない残存量が実現可能であるかについて議論した。また以前の結果では長寿命粒子が生成する粒子はニュートリノのみに限っていたが、より現実的な素粒子模型に対応するよう、他の荷電レプトンが生成される場合にもできるようにコードを拡張した。 昨年度に引き続き、重力がインフラトン及びその他のスカラー場の崩壊過程に与える影響を研究した。特 に Higgs-inflation に代表されるようなインフラトンと Ricci スカラーの間に結合が存在する模型にお いて、inflaton の運動項が振動中に劇的に変化することによって、大量の粒子生成が起こる可能性 を指摘した。この種の模型は宇宙背景放射の観測ともよく合致しているため非常に motivated であるが、この可能性については今まで指摘されていなかった。特にこの効果によって、インフラトン振動期に Higgs inflation の unitarity が破れる可能性があることがわかった。またその他にも、 超重力対称性を持つ理論において、gravitino と呼ばれる重力子の超対称パートナーの、インフレーション後の生成過程についても研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高エネルギーニュートリノ宇宙線に関しては、今年度の目標であった、起源となる重い長寿命粒子を含む具体的な素粒子模型を構築し、その宇宙論を議論した結果を論文にまとめることができたため。 またインフラトンの崩壊過程についても、研究実績の概要にも書いた通り、Higgs-inflation 模型における重力の興味深い影響を発見し、これについて論文をまとめるまでにいたったため。概要には書かなかったが、その他宇宙の再加熱期の電弱真空の不安定性に関する研究や、標準模型が内包する複数の問題点を複素スカラー場を一つ導入するだけで全て解くことのできる模型なども論文にまとめることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
高エネルギー宇宙線について。今後はより視野を広げて、ニュートリノに限らず一般に暗黒物質の対消滅過程などについての研究を行っていく予定である。特に Sommerfeld enhancement 効果が重要な場合についての計算していきたい。 インフラトンの崩壊過程について。Higgs-inflation 模型に関する研究は、ゲージ群が abelian の場合しか扱わなかったため、これを実際の標準模型に対応するSU(2)などの non-abelian の場合に拡張したい。また電弱真空の不安定性について、これまでは high scale inflation の場合を主に考えていたが、low scale inflation の場合についても考察を深めていく予定である。
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Research Products
(12 results)