2015 Fiscal Year Annual Research Report
震災による節電経験を踏まえたこれからの室内環境に関する研究
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15J06626
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
對馬 聖菜 早稲田大学, 創造理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | Zero Energy Building / 室内環境質 / 快適性 / 知的生産性 / エネルギー消費量 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、4月~8月末までデンマーク工科大学にてDC2の研究計画に沿った研究(①シンガポールのグリーンビルに関する実態調査、②室内空気質環境に関する被験者実験)を進めた。①に関して、シンガポールに所在する12棟のgreen certificatedビル(環境配慮型ビル)とnon-green certificatedビルの実測データおよび執務者に対するアンケート調査データを得て、シンガポール大学のTham Kwok Wai教授も含めて解析方法に関する議論を行った。継続してシンガポール大学・デンマーク工科大学と連携をとりながら、国際ジャーナルBuilding and Environmentへの投稿に向けて研究を進めている。②に関しては、デンマーク工科大学のチャンバーを用いて、人体からの生体化学物質が知覚空気質に及ぼす影響に関する被験者実験および化学物質分析を行った。予備実験は2015年6月24日に、本実験は8月11日および8月13日の2日間実施し、有用な実験データを得た。実験の成果は、2016度の国際学会IndoorAir2016に投稿し発表が決定している。また、2016年6~7月に控えた追加実験計画もデンマーク工科大学の指導教員と共に進めている。 帰国後は上記の共同研究に加え、③郊外の業務ビルの経済的観点を踏まえたZEB化に向けた検討に関する研究を当初の予定を少し前倒しし行った。研究目的は、今後の生活スタイルの変化などの社会的背景を踏まえつつ、経済的観点も含め標準的なビルのZEB化促進手法を検証することであり、比較的費用対効果が高い手法を採用した郊外オフィスビルを研究対象とした。2014年夏期に行った室内環境・エネルギー消費状況を調査に引き続き、2015年度は検討範囲を年間に広げ冬季に1℃の空調設定温度変更に伴う室内環境・エネルギー消費量変化に関する検証を行った。本研究結果は、2016年度の建築学会大会に口頭発表梗概として既に投稿済である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度は、DC2の研究計画に沿って、以下3つの研究に取り組んだ。①シンガポールのグリーンビルに関する実態調査、②室内空気質環境に関する被験者実験、③郊外の業務ビルの経済的観点を踏まえたZEB化に向けた検討。 ①に関して、シンガポールに所在する12棟のビルの実測データおよび執務者に対するアンケート調査データを得て、シンガポール大学のTham Kwok Wai教授も含めて解析方法に関する議論を行った。現在は実測データをまとめ解析を進めているのと同時に、シンガポールでのオフィス内環境の変遷や国による室内環境設定条件の違いとその理由、そして人種の違いによる温冷感の差異の有無などについて、文献調査を進めている。 ②に関しては、2015年度にデンマーク工科大学のチャンバーを用いて、人体からの生体化学物質が知覚空気質に及ぼす影響に関する被験者実験および化学物質分析を行い、実験成果は、2016度の国際学会IndoorAir2016に投稿し発表が決定している。2016年5月~7月にかけて再び、デンマーク工科大学にて2015年度の実験の追加実験を行う予定である。これらの結果を最終的には国際ジャーナルへ投稿することを目標に、現在も引き続き指導教員による助言を得ながら追加実験の計画を進めている。 ③に関しては、2014年夏期に行った室内環境・エネルギー消費状況を調査に引き続き、2015年度は検討範囲を年間に広げ冬季に1oCの空調設定温度変更に伴う室内環境・エネルギー消費量変化に関する検証を行った。本研究結果は、2016年度の建築学会大会に口頭発表梗概として既に投稿済である。現在は快適性・知的生産性の観点から有効な省エネ対策を把握しオフィス内環境の総合的な分析を図るため、エネルギーシミュレーションを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
上に述べた3つの研究に関して、さらに検討を行い論文としてまとめる。 ①シンガポールのグリーンビルに関する実態調査:2016年5月~7月にデンマーク工科大学を再び訪ね、現地での指導教員と共に下記②の実験と同時に本調査のまとめを行う。シンガポールのグリーンビルに関する調査だけでなく、日本のオフィスビルの現状や歴史と比較しながら、2016年度中に論文としてまとめ投稿することを計画している。 ②室内空気質環境に関する被験者実験:2015年度の実験より有用な結果が得られた(研究成果は2016年7月にベルギーで開催される国際学会IndoorAir2016にて発表予定)が、同時に課題点も見つかった。2016年度はそれらを改良し追加実験を行い、2年分の研究成果を海外ジャーナルに投稿することを計画している。 ③郊外の業務ビルの経済的観点を踏まえたZEB化に向けた検討:2015年冬季に行った実測調査結果を踏まえて、現在エネルギーシミュレーションにより、快適性・知的生産性の観点から有効な省エネ対策を把握しオフィス内環境の総合的な分析を図っている。2014年夏期にも室内環境・エネルギー消費状況を調査を行っており、最終的には上記の結果をすべて合わせ、今後のワークスタイルの動向調査も含めて持続可能な新しい室内環境の在り方を提示することを目標としている。 以上のすべての結果を踏まえ、快適性・知的生産性の観点から有効な省エネ対策を把握し、エネルギーシミュレーションも用いてオフィス内環境の総合的な分析を図る。
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