2016 Fiscal Year Annual Research Report
LHC-ATLAS実験におけるベクターボソン対に崩壊する新粒子探索
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15J06669
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野辺 拓也 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 2ボソン共鳴探索 / LHC / ATLAS実験 / Boosted Boson Tagging / 多変量解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
重心系エネルギー13TeVの陽子陽子衝突実験LHC Run-2は2年目の運転を終えた。ATLAS検出器によるデータ取得は順調に進み、積分ルミノシティは40/fbに達した。本年度もトリガーの専門家としてシフトを取ってデータ取得に貢献した。ATLASトリガーシステムはデザイン値を超える事象発生レートへの対応に成功し、データ取得効率は90%を上回った。物理解析に使用可能なデータ量は36/fbである。 昨年度から引き続き、2つの弱ボソンに崩壊する重い新粒子の探索を行っている。全チャンネルの中で最も幅広い質量領域に感度をもつ1レプトン終状態に着目した。本年度は以下の4つの成果を得た。 (1) 2015年に取得した3.2/fbのデータ解析結果を他の解析チャンネルと組み合わせて学術論文として公表した。ランドール=サンドラム余剰次元模型で予言されるbulk RSグラヴィトンの質量に対して1.1TeVの下限を与えた。 (2) 2016年の夏までに取得した13/fbのデータを用いて、解析の途中経過をICHEP国際会議とATLAS実験報告書(CONF note)で公表した。質量500GeV以上の領域で見積もられた背景事象を有意に上回る信号は観測されなかった。Bulk RSグラヴィトンの質量に対して1.25TeVの下限を与え、1レプトンチャンネルのみで(1)の結果を上回った。 (3) 現在、後述するブーストした弱ボソンのハドロン崩壊再構成(boosted boson tagging)の新手法を用いて2015-16に取得した全データ36/fbを解析している。 (4) 並行して、多変量解析を用いて弱ボソンからの信号検出効率を保ったまま背景事象をさらに落とすための新手法開発も行っている。開発中の手法を用いると新物理発見感度を約20%改善することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な研究課題であるboosted boson taggingの改良で大きな成果を得た。これまでは弱ボソンの運動力学再構成にカロリメータで測定したエネルギーのみを用いていたが、内部飛跡検出器の情報を組み合わせることで高運動量領域における質量分解能の向上を実現した。これによってより厳しい事象選別を課すことができ、新物理探索の感度向上が見込まれる。 この新手法を実際の解析で用いて新物理探索を推し進めた。4月からATLAS内部の2ボソン共鳴探索グループの1レプトン終状態解析責任者に就任し、約30人からなる国際共同研究チームを率いている。CERNに積極的に滞在し、共同研究者と議論しながら主体的に解析を進めることができた。 また、多変量解析を用いたboosted boson taggingのさらなる改良にも着手しており、既に一定の成果を得られた。 以上の理由から本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2015-16年に取得した積分ルミノシティ36/fbのデータを用いた解析を完遂する。現在解析は最終確認段階に入っており、2017年度初期の学術論文発表を目指している。 並行して、引き続き多変量解析を用いた新しいboosted boson tagging手法の開発を推し進める。2020年までに解析での実用化を目指している。 2017年度以降、LHC-ATLAS実験はさらに性能を上げる予定だ。昨年以上の高い事象発生レートが予想される。トリガーの専門家として、引き続きシフトを取ってデータ取得に貢献する。 また、2020年から始まるより高レートなデータ取得(LHC Run-3)に備えたミューオン検出器の開発、試験を行う。
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Remarks |
上記は申請者が主な貢献を果たしたATLAS実験報告書である。
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Research Products
(7 results)