2015 Fiscal Year Annual Research Report
精神疾患の次世代治療法に繋がるfMRIニューロフィードバックトレーニングの開発
Project/Area Number |
15J06788
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 歩 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 精神疾患 / fMRI / resting state fMRI / ニューロフィードバックトレーニング / Depression / 機能的結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,二つの脳領域における活動の同期具合として定義される機能的結合を変化させる結合ニューロフィードバックトレーニングを実用化レベルまで改善し,機能的結合の異常に起因する精神疾患の次世代治療法として確立させることである. 結合ニューロフィードバックトレーニングを精神疾患患者の次世代治療法として実用化するためには,訓練を個人差なく安定して成功させることに加えて,精神疾患の個人特性と関係する機能的結合を精度よく推定することが必要である.また,最終的には個人特性の変化誘導を目的とした実験を行い,効果を確認することが必須である. そこで本研究では,実用化に向けて①個人差なく安定した訓練が可能な手法の開発,②個人特性指標と関連する機能的結合の同定,③個人特性を変化させる結合ニューロフィードバック実験の実施を行う. 今年度は主にfMRIニューロフィードバックトレーニングのターゲットとする脳領域を決定するために,②個人特性指標と関連する機能的結合の同定を目標として研究を進めた. まず,安静時脳機能画像から推定した脳領域間の安静時機能的結合を使用して,うつ病患者と健常者で異なる機能的結合を同定した.また,うつ病指標であるBeck Depression Inventory Ⅱ(BDI)を推定する線形モデルを作成し,BDIと関係する機能的結合を同定した. また,複数施設で撮像した安静時脳機能画像から統一的なうつ病バイオマーカーを作成する際に,施設間における安静時脳機能画像データのバラつきが問題となったため,同一被験者が複数施設で安静時脳機能画像を撮像し,施設間での安静時脳機能画像データのバラつきを調査する研究も行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は主にfMRIニューロフィードバックトレーニングのターゲットとする脳領域を決定するために,個人特性指標と関連する機能的結合の同定を目標として研究を進めた. 安静時機能的結合を使用したうつ病バイオマーカー作成に関しては,広島大学との共同研究により,うつ病患者約150名,健常者約150名の安静時脳機能画像データを収集することが出来た.これらのデータを使用し,Sparse Logistic Regression(SLR)とSparse Linear Regression(SLiR)という機械学習法を用いて,安静時機能的結合からうつ病と健常者を判別するモデルとBeck Depression Inventory Second Edition (BDI)を予測するモデルを作成した.その結果,うつ病判別モデルでは一万弱の安静時機能的結合の中からデータ駆動的に150個程度の結合が選択され,判別率68.5%,感度61.8%,特異度73.4%という結果を得ることが出来た.また,BDI予測モデルでは,150個程度の結合が選択され,予測値と観測値の相関が0.3弱という結果を得ることが出来た.また,これら2つのモデルで共通した結合が31個存在していた. 安静時脳機能画像データの施設間でのバラつきを調査した研究では,実験協力者3名に協力していただき10程度の施設(東京大学病院や広島大学病院など)で安静時脳機能画像データを取得することが出来た.撮像方法を統一しても,施設内での安静時機能的結合の変動に比べて,施設間での変動のほうが大きいことがわかった.また,先行研究で提案されている独立成分分析を使用したノイズ除去法(ICA-FIX)を使用することで,個人の情報を出来るだけ残したまま施設間の変動を抑えることが出来る可能性を示すことが出来た.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,施設間の変動を抑えることが出来るノイズ除去法を使用し,安静時機能的結合によるうつ病判別モデルの作成方法を工夫することで判別率と予測精度を向上させ,判別率80%,予測精度0.5程度を達成することを目標とする.これらの研究結果を論文としてまとめ投稿する. 安静時脳活動の施設間変動を調査した研究は,実験協力者を10名程度まで増やし,解析結果の妥当性を検討した上で,研究結果を論文としてまとめ投稿する. そして,上記の論文投稿と並行して,個人特性指標を変化させる結合ニューロフィードバック実験を行う予定である.施設間での安静時脳機能画像データの変動を抑えたうえでうつ病バイオマーカーの作成を行い,うつ病判別モデルとBDI予測モデルで共通して選択された脳領域間の機能的結合を決定する.決定した機能的結合を変化させるニューロフィードバックトレーニングを行うことで,抑うつ気分などのうつ病指標が変化するかどうかを検証し,実験結果を論文としてまとめ投稿する.
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Research Products
(2 results)