2016 Fiscal Year Annual Research Report
分裂国家と在外国民:戦後中華民国の国籍政策に見る「国民の制度化」失敗の研究
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15J06792
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鶴園 裕基 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 台湾 / 華僑 / パスポート / 出入国監理 / 国籍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、第一年度において得られた、「戦後台湾国家の『国籍』をめぐるポリティクスは、華僑の居住国と国籍国である台湾の双方の出入国管理政策と密接に関連しながら展開していた」という知見を踏まえた研究を遂行してきた。その成果は下記の通りである。 2016年11月に中国四川省で開催された国際シンポジウムにおいて、1949年から1951年にかけての台湾において、出入国(境)管理体制がいかに形成されたかを検討した論文を報告している。本論文では、先行研究で指摘されてきた、台湾へ撤退した後の中華民国政府が実施していた極めて厳格な出入国(境)管理政策が、当初想定していた中国大陸からの撤退希望者のみならず、海外華僑までも制限していたことを日本華僑の例を挙げて明らかにした。その上で、この出入国(境)管理体制が1950年から1951年にかけての香港における難民問題を契機として手直しされ、華僑の投資家、教育進学、技術者など、中華民国政府にとって有用な人材の入境を選択的に許可する体制へと変容したことを示した。ここで明らかにした台湾における出入国(境)管理政策は、境域外の在外国民に対する政治的コントロールの前提となっていたと考えられる。 この在外国民に対する政治的コントロールの様相を、戦後における在日中国籍者を中心的な事例として検討したのが、2017年1月に刊行された日本語論文である。この論文では、1950年代以降における、戦後日本華僑社会の政治的分裂に直面した中華民国政府が、「本国政府」としての立場を利用し、パスポートの発行拒否などによる国際移動の制限を通じて政治的コントロールを加えていたことを明らかにし、これに対して中華民国政府に反対する共産党支持者や台湾独立派がさまざまな手段を通じて抵抗したことを示した。
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Research Progress Status |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(3 results)