2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J06834
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福家 佑亮 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ロールズ / 移民の倫理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究(研究課題:ロールズの政治的転回についての研究)の最終的な目標は以下のとおりである。即ち、経済学や心理学などの経験科学や我々の道徳的直感との整合性を考慮しつつ、普遍的に正当化可能な「包括的」正義の原理の彫琢を試みた『正義論』のロールズと、普遍的な正当化のプロジェクトを放棄し、民主主義や人権についてある程度文化を共有している西洋の先進諸国において、合意が調達可能な正義の政治的構想の提示に終始する『政治的リベラリズム』のロールズの間に生じたとされる政治的転回について、正義の原理に従い続けることが可能かどうかという安定性を巡る問題に関する連続性に着目して、両者の関係を整理し統一的なロールズ解釈を与えることが本研究の目的である。 今年度は引き続きロールズの政治的転回について安定性の観点から考察を加える作業を継続しつつも、同時に『正義論』から考察の範囲を拡大し、『政治的リベラリズム』や『諸人民の法』をも視野に収めた形で、整合的なロールズ解釈を提出する研究を遂行し、結果以下の成果を得ることができた。 まず『政治的リベラリズム』との連続性を重視しつつ、『諸人民の法』で提示されたロールズの国際正義論に関して、従来中心に論じられてきた分配的正義論の視点からの研究成果を摂取しながら、正義にかなった諸原理の国際的な場での承認に関して安定性の視点から独自の解釈を提出する足掛かりを得た。この研究成果は、平成29年度中に論文投稿という形で公表する予定である。 また上記の作業と並行してグローバルジャスティスに関しても研究を進め、国家が移民排除権を持つのかどうかの是非や一度国内に入った移民たちに対してシチズンシップはどのような条件の下で付与されるべきかなどの問題群を扱う「移民の正義論(ethics of immigration)」に関して、重要な研究成果を得て、学会で報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究課題はほぼ達成できたため順調に進展しているといえる。また本年度の研究課題に関連した諸分野(移民の倫理学)について重要な研究成果を得ることができたことも理由の一つとしてあげることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた研究成果をもとに安定性の観点からロールズ『諸人民の法』を読み解く作業を続行する。研究遂行に当たっては英国での在外研究も念頭に置いている。また移民の倫理学に関しても、学会発表や論文投稿といった形で研究成果を公表していく予定である。
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Research Products
(2 results)