2015 Fiscal Year Annual Research Report
反応基質を濃縮する機能をもつ中分子触媒の開発と超高速フッ素化への展開
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15J06852
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
松崎 浩平 名古屋工業大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 光触媒反応 / 赤色光励起型反応 / サブフタロシアニン / フタロシアニン / トリフルオロメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
サブフタロシアニンの中分子酸化還元触媒としての性質を明らかにするべく,本色素が600 nm付近の波長領域に強い吸収帯をもつことに着目した。現在用いられている光触媒の大部分は400~550 nmの波長で表される青~緑色の可視光に極大吸収値を示し,600 nm以降の波長を示す橙~赤色の光を用いる例は極めて少ない。そこで,赤色付近の穏和な光を利用することで,より低コストな精密合成が達成されると考え,以下の研究に着手した。 トリフルオロエトキシ基によって修飾したサブフタロシアニン(TFEOSubPc)を光触媒として用い,赤色LEDの照射下,CF3Iを用いたオレフィン類及び1,3-ジカルボニル類に対する光トリフルオロメチル化反応を検討した。その結果,還元剤であるアスコルビン酸ナトリウム及び塩基を用いることで,本は能は良好に進行した。 オレフィン類に対するトリフルオロメチル化反応について,反応機構の考察を行った。赤色光の照射,アスコルビン酸ナトリウム,TFEOSubPcのいずれかを欠いた反応条件では目的物は得られない。従って本反応は光触媒的ラジカル機構によって進行しているものと考えられる。即ち,赤色光により触媒が励起され,アスコルビン酸ナトリウムにより触媒が還元されるような還元的サイクルで反応が進行していると考えられる。 以上,本研究により我々はサブフタロシアニン触媒を用いた初の光トリフルオロメチル化反応を達成することに成功した。一方,より安定性に優れた亜鉛フタロシアニン色素を用いることにより,白色光照射下,中程度の収率でピロールやインドール等のヘテロ環へのトリフルオロメチル化反応を達成しており,今後の継続して検討を行う予定である。 また,光反応へ適応すべく,ジアリールヨードニウム塩構造をもつSF5アリール化試薬を開発し,反応の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
濃縮機能をもつ中分子触媒としてサブフタロシアニン色素に着目し,サブフタロシアニンの中分子触媒としての性質について明らかにした。現在までに本触媒についてUV-Vis吸光スペクトル,サイクリックボルタンメトリーなどの測定を行うことで,触媒の評価を行った。その結果,本触媒は報告例が限られている低エネルギー領域の赤色光を吸収して駆動することが示唆された。そこで,赤色光を用いた光反応に適用すべく反応の検討を行ったところ,本触媒を用いたオレフィン類および1,3-ジカルボニル類に対するトリフルオロメチル化を達成した。赤色光を用いたトリフルオロメチル化反応はこれまでに報告例が無く,本触媒を用いることでより低エネルギー領域の光を利用する新たな光反応の開発に成功した。また,本色素を用いた芳香族トリフルオロメチル化反応においては,溶液の退色などからサブフタロシアニン色素の分解が示唆されたため,亜鉛フタロシアニン色素を用いることで収率の改善を達成した。さらに,本触媒を用いた反応開発のための新規試薬群の合成も順調に進んでいる。従って,該当年度の進捗状況は概ね良好であり,期待通り中分子触媒の反応開発において進展があると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在光触媒として用いている中分子触媒は光照射や酸化還元を受ける環境化において分解し,紫色を呈する本触媒の溶液は無色から黄色へと変化する。即ち,本触媒の光反応条件化における堅牢性を向上させることが課題である。そこで,サブフタロシアニン骨格の触媒のみならず,安定性に優る亜鉛フタロシアニン骨格をもつ触媒についても光反応の検討を行う。 また,従来の遷移金属を用いた光触媒で達成された反応を本中分子触媒で試みたところ,全く反応が進行しない例が見られた。これは触媒の分解とともに,触媒の酸化還元電位や,一電子移動がより効率的に行われる三重項励起状態への項間交差が不足していることが挙げられる。そこで,本中分子触媒のペリフェラル位に臭素や硫黄置換基を含む触媒を合成し,重原子効果による光反応の効率化を図る。また,現在,ペリフェラル位にトリフルオロエトキシ基を修飾した触媒を主に用いているが,濃縮効果による反応性の向上を検討すべく,フルオロアルキル鎖を伸長させたヘプタフルオロブトキシ基等により修飾した触媒を合成し,反応の検討を試みる。 以上に挙げた触媒の再設計を行うことで,脱炭酸的フッ素化反応など,当初予定していた種々のフッ素官能基導入反応を検討し,本中分子触媒の更なる可能性を研究する。
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Research Products
(9 results)