2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J06864
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
山田 洋平 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ダグール語 / モンゴル諸語 / 述語複合体 / 方言差 |
Outline of Annual Research Achievements |
中華人民共和国内モンゴル自治区および黒竜江省にて言語調査を行った。 2015年7月には内モンゴル自治区フフホト市においてダグール語ハイラル方言の調査を行った。調査内容は民話の採録である。同8月には黒竜江省チチハル市市街およびメイリス区においてダグール語チチハル方言の調査を行った。調査内容は同じく民話の採録とエリシテーション (聞き取り) である。さらに内モンゴル自治区フルンボイル盟モリダワダグール族自治旗にてダグール語ブトハ方言、同ハイラル市モホルト村にてダグール語ハイラル方言の話し手を得ることができた。2016年3月も引き続き黒竜江省チチハル市メイリス区において民話の収集とデータ整理、同マンガルト村にて話し手探し、内モンゴル自治区フルンボイル盟モリダワダグール族自治旗においてエリシテーション調査、同フフホト市にてハイラル方言の民話収集とデータ整理、エリシテーション調査を行った。 エリシテーション調査によって得られたデータは『語学研究所論集』にデータとして投稿し査読中である。また採録した民話の一部は中国北方少数民族の言語資料として出版を計画している。 これらの調査と同時進行でモンゴル語の調査も行った。調査は調査協力者に対する電話等による聞き取りおよびコーパス検索により、その成果は2015年7月に行われた韓国アルタイ学会、2015年11月に行われた日本言語学会にて発表、また韓国のアルタイ学報に投稿 (査読審査中) した。 こうした一年間の調査研究活動を経て、研究の対象とする言語をモンゴル諸語東部グループの中でもとくにダグール語の諸方言に注目し、一方で「再帰所属」という文法現象から範囲を広げて動詞や述語のカテゴリーの方言間の際についてまとめるという博士論文の方向性を固めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初課題としていたモンゴル語あるいはモンゴル諸語の「再帰所属」という現象に関する研究方針を見直し、研究対象とする言語をダグール語に限定することによって研究の方向性は大幅に変更することとなった。しかしながらこれによって博士論文の構成、構想がより明確になり調査が順調に進んだ。課題の変更に伴い、論文の本旨とは直接関係のない発表なども行うこととなったが、むしろ同系統の言語であり研究の蓄積のあるモンゴル語に関してさまざまな言語現象を扱うことができたことは今後ダグール語の分析を本格的に行うにあたり資するところが大きいと考える。 調査においてはダグール語の3方言について行うことができ、また新たな調査協力者を得るに至った。 総じて、博士論文執筆の見通しが明るくなり、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように研究計画そのものには大きな変更があり、昨年度は博士論文に直接関係のある研究発表をほとんど行っていない。今年度は5月にロシアで行われる国際モンゴル学会、6月に行われる日本言語学会、8月にモンゴルで行われる国際モンゴル学会での発表が決定しており、現在の博士論文から条件副動詞、形動詞、定動詞希求形に関する研究発表を行うことを計画している。その他11月にも日本言語学会での口頭発表に応募、その他複数の投稿論文を計画している。 ただし今年度においても研究の中心は現地調査と調査によって得られたデータの整理に費やされる。大学の夏季休業(および冬季)を利用し再度ハイラル、ブトハ、チチハルの3方言の調査を行う。また未整理の調査資料の整理も同時に行う。
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