2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J06873
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 裕 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | イデオロギー / 国際比較 / 再分配 / 信頼 / 政府支出 / 世論 / 福祉国家 / マルチレベル分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、当該年度は政治的信頼と福祉国家への支持の関係を検討した。国際社会調査プログラム(ISSP)のデータを用いた分析によれば、政治家への信頼が高い人ほど福祉国家を支持する傾向が弱い。この関連性は、失業率が高い国ほど顕著である。加えて、公務員への信頼が高い人ほど福祉国家を支持する傾向が強い。この関連性は、失業率が低い国ほど顕著である。 福祉国家への支持に対して、政治家への信頼と公務員への信頼は異なる効果を持つ。加えて、二つの政治的信頼の効果には、無視できない国家間の差異が存在する。こうした国家間の差異は、各国の失業率の水準によって説明される。このように、政治的信頼と福祉国家への支持の関係は先行研究が想定したよりも複雑である。主流の理論的期待に反して、本研究の結果は、政治的信頼の特定の側面が福祉国家の正統性を掘り崩す可能性があることを示唆している。 第二に、当該年度は市場制度への信頼と政府支出への支持の関係を検討した。日本版総合的社会調査(JGSS)のデータを用いた分析によれば、市場制度への信頼が高い人ほど福祉支出の増加を支持する傾向が弱い。加えて、福祉支出選好に対する市場制度への信頼の効果は、革新よりも保守のあいだで顕著である。 福祉支出に関して、日本では保守と革新のあいだに意見の隔たりが存在しない。重要なのは、保守と革新の対立ではなく、市場制度を信頼する保守と市場制度を信頼しない保守の対立である。ほかの条件が等しければ、社会保障への支持と雇用対策への支持の予測確率は、市場制度を信頼する保守のあいだで最も低く、市場制度を信頼しない保守のあいだで最も高い。社会保障と雇用対策が福祉国家の主要な活動であることを考慮すると、福祉国家の熱心な支持者が革新であるとは限らない。本研究の結果は、葛藤する保守が福祉国家の潜在的反対者であると同時に、福祉国家の潜在的支持者でもあることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マルチレベル分析を用いた国際比較研究に加えて、日本を対象とした研究によって、当該年度の課題である、福祉国家に対する態度の形成における信頼の役割が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
小さな政府に関して、日本では保守と革新のあいだに意見の隔たりが存在しないという知見の頑健性を評価するために、保革自己イメージと政府支出への支持の関係を検討する。
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Research Products
(6 results)